初心者にも活躍のチャンスがある

最近はプログラミングスクールも増えていますし、書籍や無料で学べるウェブコンテンツも豊富ですから、大人になってからプログラミングに触れる方もいるでしょう。

これはとても良いことで、たとえプログラマーやエンジニアにならなくても、アプリやITツールの裏側がどうなっているのかを知ることは、それらを活用したり新たなサービスを企画したりするうえで大いに役立ちます。

また、プログラムは正しく書かないと狙い通りに動きません。プログラムを書いて試して動かすことを、「debugデバッグ(問題の発見と修正)してexecuteエグゼキュート(実行)する」と言いますが、こうした訓練を受けておくことは、プロジェクトなどを動かすリーダーとしての感覚を養うことにもつながります。

もちろん、日本ではIT人材不足が問題になっていますし、学んだことを活かしてプログラマーやエンジニアにキャリアチェンジするのも良いでしょう。

実はこれらの職業には、経験の浅い方にも活躍のチャンスがあるのです。ITの世界ではどんどん新しい技術や言語が生まれていて、業界のベテランも初心者も、新しい事は同じように基礎から学ぶ必要があるからです。キャリアの長い人だけが有利というわけではないので、どんどんチャレンジしてほしいと思います。

女性としての特長が発揮される場面も

「理系は苦手」「メカや機械はちょっと……」とITに苦手意識を持っている女性も多いのですが、実はいわゆる文系的なセンスや特に女性の多くが得意とするコミュニケーション能力が生きる場面も多くあります。

例えば、プログラミングでは後で使う人のことも考えてわかりやすいコードを書いたり、「Readme」と呼ばれる取り扱い説明書をきちんと整えることも必要です。その点女性は、他の人に配慮したあるわかりやすい表現が上手な人が多いというのが私の印象です。

職業柄、技術的なセミナーで講演をすることが多いのですが、ほかの登壇者が話しているときは居眠りしていた人たちが、私が話し始めたらみんな目を覚まして最後まで聞いてくれて驚いたことがあります。

男性講師の多くは「最新のイケてる機能をいち早く教えます」という姿勢になりがちですが、私は「初めてこの技術に触れる人は、ここがミスしやすいポイントだから気をつけて!」という観点でお話をします。難しい内容をわかりやすく、相手の役に立つように伝えることで、皆さんが私の話に興味を持ってくださったのだと思います。

女性には出産、子育てというライフイベントが伴うケースもあり、それとITエンジニアの仕事を両立するのは大変だという方も多いです。でも、私はむしろ「子育てと仕事、ふたつも没頭できることがあるのは幸せだ」と思っています。両方がんばって良い結果が出れば、どちらか一方だけのときよりも大きな喜びが得られます。仕事にかけられる時間は限られますが、スキマ時間を使えばスキルアップも可能です。

ぜひ自信をもってチャレンジしてください!

構成=やつづかえり 写真=iStock.com

戸倉 彩(とくら・あや)
日本アイ・ビー・エム株式会社 シニア・デベロッパー・アドボケイト

シマンテックでITエンジニアとしてのキャリアをスタート。2011年11月から日本マイクロソフトでテクニカルエバンジェリストとして、同社公式キャラクター『クラウディア窓辺』の“中の人”を担う。18年5月に日本IBMに転じ、セミナーやイベント登壇、授業講師、執筆活動を通じてクラウドネイティブアプリ開発や開発ツールの技術啓蒙を行っている。著書に2018年10月より毎月連載「Visual Studio Code 快適生活」〔『Software Design』(技術評論社)掲載〕、共著に『DevRel エンジニアフレンドリーになるための3C』(翔泳社)など。