そもそも関心を持つ女性が少なかった

これまでIT業界に女性が少なかった理由のひとつは、プログラマーやエンジニアという職業に興味を持ち、やってみようという女性そのものが少なかったことにあります。

それでも最近は、ウェブデザインやウェブサイト制作といった分野を中心に女性が増えています。しかし、もともと女性が少なかったがゆえに企業の対応も遅れがちで、必ずしも女性が働きやすい環境が整っていませんでした。だから辞めてしまう女性も多く、後で戻ってくるのも難しいという状況がありました。

こんな事情があって女性が増えづらかったIT業界ですが、最近は変わりつつあります。実は私自身、出産を経て一度は営業職に就きましたが、目標よりも早くエンジニア職に戻ることができました。クラウドサービスの発展によって在宅勤務などもしやすくなっています。何よりも、これからの世の中では女性エンジニアの必要性が高まっていきます。

今、エンジニアのスキルや、女性の感性が求められている

これまでのテクノロジーの世界は、どちらかというと男性が中心になって発展してきました。

小学生のとき、クリスマスプレゼントにゲーム機をもらったのですが、まだ昭和だったその頃はゲームといえば男の子向けのものばかり。「どうして女の子向けのゲームがないのかな?」と思ったものです。

戦闘系のゲームの激しい色や音を、もう少し自分の好みのものにしたくて父に相談すると、「ゲームはプログラムで動いているから、それを書き換えたり、あるいは自分で書くことで、好きなゲームを作り出せる」と教えてくれました。私がプログラミングに興味を持ったきっかけです。

当時に比べると、今はテクノロジーが日常生活により広く浸透しています。家電もスマートフォンもコンピューターで動いていて、老若男女さまざまな人が使います。そういったものを作るとき、女性の視点なしで良い商品やサービスにするのは難しいはずです。

例えば、最近私が気になっているものにVR(バーチャル・リアリティ)デバイスがあります。ヘッドセットという大きなゴーグルを頭に付けることで、バーチャルの世界に入り込んだような感覚でゲームなどを楽しむことができるものです。

今発売されているものは、女性の頭にはフィットしにくかったり、装着するときに顔に当たるのでファンデーションが付いてしまったりします。きっと男性のエンジニアが設計していて女性がテストしていないから、私たちにとって使いやすいものが出てこないのだと思います。

見た目のデザインだけでなく、プログラミングやデータ分析・活用などにおいても、多様な視点がないとみんなが使いやすいものはできません。活用の範囲が広がってきているAI(人工知能)も、「機械学習」といって過去のデータの蓄積を基に判断を行うのですから、そのデータに偏りがあれば導き出される答えも平等性に欠けるものになってしまいます。

わかりやすい例を挙げると、AIが靴の写真を認識できるように学習させるとき、男性だけが基となるデータを用意すると、革靴やスニーカーは正しく認識できても、女性のサンダルは靴として認識できない、といったことが起きるんです。