「客層マトリクス」で新規顧客の客質を決める

中期戦略で考えていかなくてはいけないのが、新規顧客の獲得である。緊急事態宣言下の短期戦略では優良顧客、常連客、エリア内の顧客に対して、信頼を担保に売上を作ることができた。これらの客層は、中期戦略に入っても、来店に対しての警戒心が少なく、引き続き売上を底支えしてくれる貴重なお客様になってくれる。しかし、優良顧客だけに頼る販促には限界がある。中期戦略に入り、お客様の財布が緩みだしたタイミングで、新規顧客を獲得して、売上を伸ばしていく戦略を展開していかなければいけない。

中期戦略においての新規顧客獲得で注意する点は、お客様の「質」である。従来の販促では、所得や職業によってお客様の「質」を分類することができた。しかし、新型コロナウイルスの感染リスクによって、お客様の心理的状況や考え方が細分化されてしまい、新たな顧客の「質」を分析して、販促戦略を展開していかなければいけない。

次のマトリクスで顧客を分類してみたので、参考にしてもらいたい(図表1)。

コロナ禍における客層マトリクス

巣ごもり状態の顧客の心理状況には、2つの軸がある。1つは感染に対する「恐怖心」、もう1つは自分自身の「良識」である。両方とも個人差のある感情なので、明確な基準を設けることが難しい。しかし、ここでは“一般的な感情”というアバウトな意味合いで、お客様の「質」を見極めていきたい。

①感染が怖くて、良識がある

感染に対しての恐怖心はあるが、良識的な行動をとる人のことをいう。中期戦略に入っても完全非対面の接客を好み、ネット通販、またはなじみの店でしか最低限の買い物をしない。このような客層を新規顧客として獲得することは難しく、感染に対しての恐怖心が強いため、無理をして中期戦略で狙いにいかないほうがいい。

②感染が怖くて、良識がない

神経質になりすぎて、感情的な行動を取ってしまう人のことである。店頭で怒鳴ったり、ヒステリックになったりする人は、従業員やほかのお客様の神経をすり減らすことにつながる。中期戦略では狙いたくない客質といえる。

③感染が怖くなくて、良識がある

感染に対して、ある一定の距離感をとったバランスの取れた人たちのことをいう。巣ごもりでストレスが溜まり、今すぐに外に出たいが、良識があるので「そこまで派手には外に出られない」「感染は怖くないけど、万が一の可能性がある」と、心のどこかでブレーキをかけられる人たちである。

このようなバランス感覚の取れた客質を、中期戦略では狙いたい。このようなお客様を新規顧客として迎え入れて、優良顧客に引き上げていきたいところである。

④感染が怖くなくて、良識がない

この4つの中で、最も警戒しなくてはいけない客質である。スタッフやほかのお客様に感染を広めてしまうリスクがあり、中期戦略でも、できるだけ接触を回避したい客質といえる。