意識すべき2つの視点

一つ目の視点は“Fact”と“Opinion”です。“Fact”とはいわゆる事実のことです。“Opinion”とは、日本語に訳すと情報発信者の意見ということになりますが、ここでは、情報発信者の意見のほか、情報発信者の推測なども“Opinion”の中に含めます。

二つ目の視点は、「定量情報」と「定性情報」です。定量情報とは、統計データのように数字で表される情報のことです。人口統計やGDPなどが定量情報に相当します。一方、定性情報とは、お客様の声、行動、感情など数値化できない情報のことです。画像や音声、テキストデータなどデータの種類について用いられることもあります。

これら二つの視点を掛け合わせると、情報は、4つに分類されます。例えば、GDPの前年比や企業の売上数字は“定量のFact情報”です。来年のGDPの成長目標や企業の売上目標は“定量のOpinion情報”です。「お客様はこの商品に不満がある」という推測は“定性のOpinion情報”ですが、あなたがお客様から直接聞いたクレーム情報は、“定性のFact情報”にあたります。

情報処理に関するこの二つの視点を意識せずに情報を収集し、提案などに用いても説得力が落ちてしまいます。

情報処理の鉄則を守れば、提案力が変わる

例えば、ある調査会社が、K業界の5年後の市場予測をインターネットで公表したとします。その市場予測をもとに、あなたは以下のような提案をしました。

“K業界は、5年後の市場規模が2倍になると予測されています。調べてみると、わが社の原料はK業界の商品にも応用できますのでK業界に参入しましょう”

しかし、提案を聞いた人たちの多くは、K業界に参入しようとは思わないでしょう。「K業界の市場規模が5年後に2倍になる」という情報は、あくまでも予測、つまり“Opinion”であるからです。

一方、K業界は過去5年間に毎年10%の成長を続けた事実があるとします。そこで、“K業界は、過去5年間、毎年10%の成長を続けており、この5年間で1.6倍の規模に成長しました。調べてみると、わが社の原料はK業界の商品にも応用できますので、K業界に参入しましょう”

という提案をした場合、先ほどの提案よりも支持を得やすくなります。過去5年間、K業界が毎年10%の成長を続けたことは事実であり、誰もが受け入れられる数字であるからです。それに対し、今後5年間で2倍に成長するという予測の数字に対しては、提案を聞いた人たちが数字の根拠がわからず、確信を持つことができません。調査会社による予測の数字を提案に用いたあなた自身も、「K業界の市場規模は5年後に2倍になる」と自信を持って説明することはできないでしょう。“Fact”情報は重みが違うのです!