日常生活で上手に暑熱順化する方法とは?

環境省は「やや暑い環境」で「ややきついと感じる」運動を毎日30分行うことで暑熱順化が得られるとしている。しかし、コロナ禍でジムを退会したり、在宅ワークが継続していたりと運動量が減りがちな今、日常生活で汗をかける手段として入浴を利用するのも一つの方法だ。このほど、バスクリンが興味深い結果を発表した。

健常人男性を対象に、40℃・15分間のさら湯での全身浴を2週間続けてもらい、発汗機能や皮膚血流量にどのように影響するのかをまとめた結果がこちら。

【図表】継続的な入浴の温熱負荷による入浴中の血流量

試験開始時と試験終了時を比較すると、入浴中の皮膚血流量は有意に高まり(図表1)、発汗を確認するまでの時間は有意に短縮したことがわかる(図表2)。皮膚血流量の増加と、発汗の開始時間の早まりは、体温を素早く下げる能力が高まったことを意味する。

「40℃・15分間の入浴による継続的な温熱負荷が、夏の暑さに備えた体づくりの手段として有用だと考えられます。暑熱順化が進むと、同じ熱刺激を受けても汗がたくさん出るようになり、皮膚の血流量が増加するようになります」(株式会社バスクリン 製品開発4グループ長 石澤太市さん)

さらに、日頃から汗をかく習慣のある人は、あまり汗をかかない人に比べて、汗の塩分濃度が低いことが知られている。汗腺には発汗するときに汗の塩分を再吸収する働きがあり、大切な塩分の喪失を防いでいるが、普段から汗をかいていないと再吸収の働きが低下してしまい、塩分を汗で失ってしまうことになる。「いい汗」をかくためにも、日頃から汗を出せる体に慣らしておきたいものだ。

真夏の入浴習慣を快適にするコツ

暑い時期は湯上がりにほてってしまうなどの理由からシャワーで済ませがちだが、暑熱順化のためにもなるべく湯船に浸かりたいもの。入浴剤を使うと発汗作用が高まるため、さら湯で入浴するよりも短時間で同等の効果が得られて効率的だという。

暑い時期でも快適に入浴するためのコツを石澤さんに教えてもらった。

●メントール等が配合された入浴剤を使う

「清涼感と湯上り後の爽快感が得られておすすめです。体の芯はしっかり温めつつもさっぱり入浴でき、ほてり感も緩和してくれます。夏は暑さで睡眠が阻害されがちですが、ぬるめの湯に入浴して副交感神経を優位にすることで、良質な睡眠が得られます」

メントール高配合で夏特有の疲労や湯上がりのほてり感を緩和する。高濃度の炭酸ガスや温泉ミネラル成分が温浴効果を高めて血行を促進し、疲労・肩こりや腰痛に効く。きき湯 ファインヒート 爽快リフレッシュ ミント&レモンの香り[医薬部外品] ボトル400g オープン価格/バスクリン
メントール高配合(*)で夏特有の疲労や湯上がりのほてり感を緩和する。高濃度(*)の炭酸ガスや温泉ミネラル成分が温浴効果を高めて血行を促進し、疲労・肩こりや腰痛に効く。きき湯 ファインヒート 爽快リフレッシュ ミント&レモンの香り[医薬部外品] ボトル400g オープン価格/バスクリン
*同社、きき湯清涼炭酸湯比
●頭に冷たいタオルを乗せてのぼせ防止

「頭に濡れた冷たいタオルをのせると、のぼせ防止に役立ちます。また、一気に長時間湯船に浸かるのではなく、分割して浸かることもポイントです」

●水分補給は入浴の「前」「後」に

「入浴後だけでなく、入浴前にもしっかり水分補給をしましょう。水やお茶でOKですが、発汗量が多いときはイオン飲料でミネラル分を補給するのが有効です」

●お風呂上がりの冷房に注意

「お風呂上がりは冷たさを感じにくくなっています。冷房の効いた室内で、薄着のままでいると湯冷めの原因になるので注意が必要です」

日本救急医学会代表理事の嶋津岳士氏は、「今年は熱中症で発熱した患者と新型コロナウイルスの患者とが区別できず、搬送先が見つからずに治療が遅れてしまうおそれもあるため、対策を心がけてほしい」と、熱中症へ警戒を呼びかける。日常生活で汗をかく習慣を意識して、暑さに負けない体づくりを心がけたいものだ。

写真=iStock.com

中島 夕子(なかじま・ゆうこ)
フリーライター&エディター

ヘルス&ビューティ系の記事を中心に、Web、雑誌、単行本などの執筆を手掛ける。