最大限の能力が発揮されることを目的とした活動

このようなレクリエーションデイやリトリート(名称はなんであれ)は、仕事の能力や、やる気を維持、改善するための活動と考えられている。仕事の技能を高める研修とは別物で、もっと幅広い視点から捉え、心身の状態やチームスピリットを向上させ、仕事と組織の力を高める。

堀内都喜子『フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか』(ポプラ新書)

それがうまくいけば、社員たちは持っている力をより発揮しやすくなり、効率が高まる。一方でいくら能力のある人でも組織力や環境、やる気などが整っていなければ、全体の仕事力は落ちてしまう。しかもこういった仕事や組織力を高める努力は継続的に行われなければならない。

仕事力を高める活動は法律でも決められているものなので、雇用主、人事、各社員が協力して計画、実現される。とは言っても、法律はその活動の内容までは決めてないし、実施したかどうかの確認まではない。だが、その活動やプログラムの幅は非常に広い。休憩時間のエクササイズや、一緒にランチを食べることもこの活動の一環と捉えられている。

かつて私がアルバイトした企業では、健康的な朝食を会社が月に一度提供し、それを経営陣のプレゼンを聞きながらみんなで食べるといったことをしていた。月に一度、マッサージ師が来て一人15分、勤務時間内にマッサージを受けることができるなんてこともあったが、それも大きく見れば、この仕事力向上の活動に入る。つまり最大限の能力が発揮できるよう、気持ちの良い環境を作り、組織を改善していくことのすべてが大切にされている。

会議の場所はどこだっていい

会議を社内の会議室以外で行うことは、社内改善の話し合いに限らずある。特に新たなアイデアや創造力を必要とする時に、いつもと環境を変えてメールや電話から解き放たれて、カフェやレストラン、誰かの家などリラックスした雰囲気の場所が好まれる。中には、サウナの中(もちろんずっと入っているわけではない)で行われた例も聞いたことがある。机の前のかしこまった会議だけが、全てではない。

また、かつて労働環境改善のミーティングでも、場所を変えたり、ケーキなどの差し入れを持ってきて話をしたことがある。どうしてもオープンに話しにくかったり、普段おつきあいのない相手とだと、話が弾みにくかったり、緊張してしまうことがある。それを差し入れや雰囲気を変えることで、リラックスして話せるようになった。

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堀内 都喜子(ほりうち・ときこ)
ライター

長野県生まれ。フィンランド・ユヴァスキュラ大学大学院で修士号を取得。フィンランド系企業を経て、現在はフィンランド大使館で広報の仕事に携わる。著書に『フィンランド 豊かさのメソッド』(集英社新書)など。