有休消化率100%、午後4時には仕事を終えているにも関わらず、GDPは日本の1.25倍を誇る幸福度世界一位の国フィンランド。フィンランド人と日本人の働き方は、何が違うのでしょうか? フィンランド大使館に広報として勤める堀内都喜子さんが、フィンランド人の効率のいい働き方を教えてくれます。

※本稿は、堀内都喜子『フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか』(ポプラ新書)の一部を再編集したものです。

レストランで街の人々に、フィンランドのヘルシンキ
※写真はイメージです(写真=iStock.com/tekinturkdogan)

社員が交流するレクリエーションデイ

黙々と定時で仕事を終え、まっすぐ家に帰る日々。飲みニケーションの機会が少ないフィンランドの仕事文化はドライに聞こえるかもしれないが、意外にもかつての日本でよく見られていたような、社員同士の交流の機会がある。それが、レクリエーションデイと呼ばれる日だ。

この日は勤務日ではあるものの、職場で通常の業務をするのではなく、皆でどこかへでかける。いわゆる社員旅行のようなものだ。中には泊りがけで行く場合もあるが、できるだけ大勢が参加でき、プライベートの時間を邪魔しない配慮から、日帰り遠足のような形が多い。

友人の勤める会社でも、今年の春、郊外のリゾートホテルでレクリエーションデイを行ったそうだ。最初はオフィシャルに会社に関するプレゼンを聞き、午後は自然の中をガイドと共に散策。そしてサウナ、早めの夕食、解散。とてもリラックスできたし、裸のつきあいもして同僚との距離がより近くなった気がすると話していた。

外で気軽に話し合う文化、リトリート

レクリエーションデイと近いが、最近耳にするものに、リトリートがある。もともとリトリートというのは、宗教と結びついていて、忙しい日常や混沌とした状況を改善するために、静寂の時間を設けたり、オープンな話し合いをしたりすることを指す。

現代におけるリトリートは、大概、ランチと数時間の話し合いがセットになったもので、長期的視野に立って職場環境の改善や、仕事の効率向上など課題を議論する。しかも、社内のいつもの会議室ではなく、環境を変えて気分あらたに、どこか社外で開催することが多い。

リトリートという言葉を使わずとも、こういったやり方は、多くの組織に導入されている。私がこれまでに参加したものも、外部の眺めのいい会議室でおいしいランチをいただき、その後、組織の課題がトップから出され、小グループに分かれて課題に対する対応策を話し合い、最後に全体でそれを発表してまとめるというものだった。普段のオフィスから出ることで、メールや電話から解放され、気分も変わるし話し合いに集中しやすくなる。

その時の課題は、内部のコミュニケーションや情報共有を促進するにはどうしたらいいか、どうすればもっと魅力的な職場になるのか、効率をあげるために求められる設備やテクノロジーはあるか、などなど。

リトリートがもたらす効果とは

トピックスは職場で定期的にある満足度調査やマネージメントの評価調査、個人の目標設定の話し合いなどを経て見えてきたものだったり、新たにその場でみんなに聞いて出てきた課題のこともある。

様々な部署や立場の人たちと同じグループで話し合いをすることで、課題に対する新たな視点が生まれたり、「やっぱりみんなそう思うよね」といった悩みの共有や共感が生まれたりする。そこで話し合って改善策が提案されても、すぐに課題が解決されるわけでもないし、実現しないこともあるが、オープンに話ができるのは刺激になるし、上層部に頼ったり、任せるのではなく自分も組織の一員として主体的に考えられるようになる。

ある友人の会社は2年に一度、社員の心身の健康調査が行われ、その結果を踏まえてどんな福利厚生や活動、環境改善が必要なのかを社員が話し合って、自らが提案していくのだそうだ。

最大限の能力が発揮されることを目的とした活動

このようなレクリエーションデイやリトリート(名称はなんであれ)は、仕事の能力や、やる気を維持、改善するための活動と考えられている。仕事の技能を高める研修とは別物で、もっと幅広い視点から捉え、心身の状態やチームスピリットを向上させ、仕事と組織の力を高める。

堀内都喜子『フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか』(ポプラ新書)

それがうまくいけば、社員たちは持っている力をより発揮しやすくなり、効率が高まる。一方でいくら能力のある人でも組織力や環境、やる気などが整っていなければ、全体の仕事力は落ちてしまう。しかもこういった仕事や組織力を高める努力は継続的に行われなければならない。

仕事力を高める活動は法律でも決められているものなので、雇用主、人事、各社員が協力して計画、実現される。とは言っても、法律はその活動の内容までは決めてないし、実施したかどうかの確認まではない。だが、その活動やプログラムの幅は非常に広い。休憩時間のエクササイズや、一緒にランチを食べることもこの活動の一環と捉えられている。

かつて私がアルバイトした企業では、健康的な朝食を会社が月に一度提供し、それを経営陣のプレゼンを聞きながらみんなで食べるといったことをしていた。月に一度、マッサージ師が来て一人15分、勤務時間内にマッサージを受けることができるなんてこともあったが、それも大きく見れば、この仕事力向上の活動に入る。つまり最大限の能力が発揮できるよう、気持ちの良い環境を作り、組織を改善していくことのすべてが大切にされている。

会議の場所はどこだっていい

会議を社内の会議室以外で行うことは、社内改善の話し合いに限らずある。特に新たなアイデアや創造力を必要とする時に、いつもと環境を変えてメールや電話から解き放たれて、カフェやレストラン、誰かの家などリラックスした雰囲気の場所が好まれる。中には、サウナの中(もちろんずっと入っているわけではない)で行われた例も聞いたことがある。机の前のかしこまった会議だけが、全てではない。

また、かつて労働環境改善のミーティングでも、場所を変えたり、ケーキなどの差し入れを持ってきて話をしたことがある。どうしてもオープンに話しにくかったり、普段おつきあいのない相手とだと、話が弾みにくかったり、緊張してしまうことがある。それを差し入れや雰囲気を変えることで、リラックスして話せるようになった。