一番のハードルは、人事評価制度
【白河】もともと柔軟な働き方ができているところに、今回の在宅勤務の経験値が重なって、これからもっと柔軟な働き方になっていくということですね。
【西浦】そうですね。おそらく今後の働き方においては、時間と場所の管理という概念がなくなっていくだろうと思います。働き方や働く場所は、その人のライフスタイルに合っていればいいと思うんです。一足飛びにはできませんが、そこに向かってどうやってソフトランディングしていくか、そこが今の私のいちばんの課題です。
その大きなハードルになるのが評価制度です。人事評価については、何よりも公平性を保てることが重要でしょうね。今後の人事評価の在り方については、タスクフォースを立ち上げて検討しています。また、社員には一人ひとりが自分のキャリアについてオーナーシップを持ってほしいとの考えから、そういったキャリア開発をサポートする制度も導入しています。
【白河】いくら働き方が変わっても評価そのものが変わらなければ、新しい働き方は実現できないということですね。個人がキャリアのオーナーシップをとるために、具体的にはどのような機会があるのでしょうか。
【西浦】日常的な1on1に加え、四半期に一度は育成に焦点をあてた面談を行っています。キャリアについても、全社員が毎年上司と1on1をすることになっています。
【白河】そのときに上司と話し合って軌道修正し、たとえば社外に勉強しに行くといったこともあるのでしょうか。
【西浦】そういった社員もいますよ。「Re-Creation休暇」と呼んでいるのですが、実際に自分に投資するための休暇制度を設けています。たとえば勉強のためにセミナーを受けに行く、資格をとるために集中して勉強するなどといった用途で活用されています。
変わらない企業は淘汰されていく
【白河】お話を聞いていて、本当に柔軟にアフターコロナ、ウィズコロナの働き方を設計されていて素晴らしいと思いました。
【西浦】やはりニューノーマル(新常態)といわれるように、今後はこれまでの常識が非常識に、非常識が常識になることは、たくさん出てくると思うのです。お客様のニーズも変わってきますから、企業もそれに合わせて変革していかなければならない。お客様のニーズとしては、よりデジタルにシフトしていくように感じています。
【白河】相談や契約など、すべてデジタルベースで決めたいという方が増えているということでしょうか。
【西浦】そう思います。今回のコロナ問題でネットショップに今までにないほどの注文があったようですが、保険も商品の契約内容の継続や変更など、対面で手続きするよりも、電話やネットなどを活用されたい方がこれまで以上に増えるでしょうね。また今まで保険に関心がなかった方も、こういう状況下では必要性を感じられるでしょうから、そういう方々にも適切な保障を提供できる商品ラインナップをそろえていかないといけないと考えています。
【白河】そう考えると、やはり日本にはすごいパラダイムシフトがきたんですね。ここで変われるか変われないかで、今後の企業が生き残れるかどうかが決まっていくのでしょうね。
【西浦】本当にそうだと思います。ここできちんと状況認識、状況把握ができて、変わらなければいけないという意識を持てない企業は淘汰されていく、そう感じています。
【白河】最後に、そういった淘汰されない企業になるためにも、今後の女性活躍に対して覚悟の一言をお願いします。
【西浦】女性が元気に活躍できる企業は、大きく成長する企業だと私は考えています。ですから今後も、女性に男性と同じだけのキャリア機会を与えられるように取り組んでいきたい。そして男女にかかわらず、サスティナブルな働き方をすすめていきたいと思っています。同じ会社に長く働いてもらえるのは、経営にとって非常に大事です。そのためには働きがいのある職場をつくっていかなければならない。そこに私はフォーカスしていきたいと考えています。
【白河】ありがとうございました。
構成=池田純子
1968年、奈良県生まれ。米国サンノゼ州立大学卒業後、90年日本モトローラ株式会社、93年チューリッヒ保険会社入社。2001年アクサ損害保険会社セールス&マーケティング本部本部長を経て、10~12年チューリッヒ保険会社のダイレクト事業本部本部長としてダイレクト事業の成長に貢献。12~15年個人保険部門統括本部長として個人保険事業部門全体を統括しながら、経営委員会のメンバーとして経営の中核を担う。16年より現職。
1961年生まれ。「働き方改革実現会議」など政府の政策策定に参画。婚活、妊活の提唱者。著書に『働かないおじさんが御社をダメにする』(PHP研究所)など多数。