4.新人には厳しく教え込むべきという考えを捨てられない
VUCAと言われる今の時代、新人には答えを教えて指示通りにやらせるのではなく、答えのない中でも自分で考えてトライし、学んでいく力をつけさせる必要があります。そのためには、上司はあれこれ介入しすぎずに本人の考えを尊重すること。トライしたらその結果よりもプロセスに注目し、そこから何が学べるかを一緒に振り返ることが重要です。それを繰り返していくことで、新人はだんだんとトライすることに自信を持ち、成長していくことができます。
このようなことを、研修でマネジャーや新人育成担当の方々にお伝えすると、「確かに」と理屈は理解してもらえるのですが、「マインドを切り替えるのは簡単じゃない」という声をよく聞きます。「新人に迎合するようで抵抗がある」とか「やっぱり時には厳しさも必要なんじゃないかな」といった思いがどうしても出てくると。その気持ちは自然なものだと思います。ただそこには、「新人はまだ未熟だから、大人が教えてあげる存在だ」という教育観があるように感じます。でもそれだけではなく、共に学ぶ関係や、むしろ新人から学ぶ姿勢があってもよいと思うのです。
というのも、Withコロナの時代には、既存のやり方に染まっていない新人や若い世代の強みが大いに生かせるはずなのです。
例えば、これまでよりもテレワークの頻度が増え、お客さんとも対面で会う機会が減っていく状況に対してどんな工夫ができるか――。そんな課題についても、オンラインでつながることに慣れていて、社会の変化への感度が高い彼らのほうが、良いアイデアを出せるのではないでしょうか。
今の新入社員はZ世代と呼ばれ、その少し上のミレニアル世代と合わせてMZ世代と呼ばれます。人数の上では、彼らはすでに職場の中の過半数を占めています。それなのに、マネジメントのスタイルが上下関係を前提としたもののままではうまくいきません。今の時代にフィットした感性をもつMZ世代の強みを生かせれば、この難しい時代を乗り越えていくことができる――そう考えて新しいマネジメントにトライしていってもらえたらと思います。
構成=やつづかえり 写真=iStock.com
1992年、人事測定研究所(現リクルートマネジメントソリューションズ)入社。営業、商品開発、マーケティングマネジャー、コンサルタント職を経て2015年より現職。新人若手育成を専門領域とし、10年以上のコンサルティング経験を土台に、これからの時代の育成や学習手法の研究開発に取り組んでいる。立教大学経営学部兼任講師。NPO法人青春基地にプロボノ参加中。