連邦政府の取り組みが波及
連邦政府が中心となって推進してきたテレワークですが、ワシントンD.C.ではこの動きが民間企業にも波及しています。もともとアメリカではテレワークを導入している企業が多いですが、ワシントンD.C.には政府機関を顧客とする民間企業も多いため、連邦政府の取り組みが及ぼす影響力は大きいのです。
例えば大雪の日は、人事院のウェブサイトに「本日、ワシントンD.C.にある連邦政府の各機関は閉鎖です。テレワークができる連邦政府職員は在宅勤務をしてください」などの情報が掲載されます。このエリアの民間企業も、こうした連邦政府の判断を参考にしてオフィスの閉鎖やテレワーク移行を決めたりしています。酷暑に見舞われた夏は、暑さのためにテレワークが勧められた日もありました。
「テレワーク嫌い」だったトランプ大統領も一転
一方、ホワイトハウスの動きは少し異なります。トランプ大統領は、大統領就任以前からテレワークには否定的でした。部下に直接指示を下し、仕事ぶりを自分の目で判断したいためだと言われています。このため、トランプ政権になってからは、省庁によってはテレワークの利用を制限する動きもありました。
しかし、新型コロナウイルスの感染拡大によってそれが一転。連邦政府を挙げて、可能な限りテレワークを行うことになりました。
突然テレワークを組織全体で実施するのは、簡単なことではありません。しかしこれからも、またそれが求められることになるかもしれません。新型コロナウイルスは、一時的に収束したとしても、ワクチンや特効薬が開発されない限り、また第2波、第3波と続く可能性があるからです。
連邦政府が今回、スムーズにテレワークに移行できたのは、2010年の「テレワーク強化法」から10年にわたって推進してきたためです。日本の企業や政府機関もこれを機に、本格的にテレワークを推進すべきでしょう。
写真=笹栗 実根
福岡県出身。フジテレビ報道記者、ニュースキャスター、ワシントン特派員を経て、国際結婚を機に米国永住。海外書き人クラブwww.kaigaikakibito.comのメンバー。雑誌やラジオでアメリカの情報を発信。翻訳や日本語教師の仕事をする傍ら、地元で日本語を学びたいアメリカ人の子供達のためにNPOを創設。