連邦政府は日ごろからテレワークを実施

アメリカは日本に比べてテレワークの導入が進んでいますが、首都ワシントンD.C.も例外ではありません。日本の場合、テレワークは民間(特に大企業)が推進し始めている一方で、官公庁の取り組みはなかなか進んでいない印象ですが、ワシントンD.C.の場合は連邦政府がテレワーク導入をけん引しています。

ロックダウンで車の影が消えた、ホワイトハウスから国会議事堂に続く通り
ロックダウンで車の影が消えた、ホワイトハウスから国会議事堂に続く通り

ワシントンD.C.には連邦政府機関が集中しており、約42万人の職員が住んでいます。その多くは、日ごろからテレワークで仕事をしています。私の子どもが通う学校にも、連邦政府職員のお子さんがたくさんいますが、学校行事では「テレワークで時間を調整してきた」というお父さんやお母さんが当たり前にいます。

災害対策と環境対策で導入が進んだ西海岸

アメリカでテレワークが始まったのは、50年近くも前の1970年代です。西海岸カリフォルニア州で当時NASA(アメリカ航空宇宙局)のプロジェクトを担当していたジャック・ナイル氏が「テクノロジーのお陰で、仕事は自宅でできるようになった。それなのに、どうして職場に行かなければならないのか」「通勤の代わりに通信技術を使えないか」と考えたのが始まりだと言われています。

当時は「テレコミューティング」と呼ばれ、ナイル氏が民間企業や連邦政府に提案したときには、ほとんど理解が得られませんでした。しかし1980年代に入って、カリフォルニア州政府が仕事の効率化などの効果をようやく認識して導入を開始。1989年のサンフランシスコ地震では、州政府の建物も被害を受けましたが、テレワークの職員が業務を継続することができたことから、州政府が本格的に制度として取り入れることになりました。

その後、環境意識の高い西海岸では、交通渋滞や大気汚染、原油の高騰などの問題を解決する手段の一つとしても注目され、通勤時間の節約だけでなく省エネルギー効果もあるテレワークが、IT技術の進歩とともに広がりました。