鍋を雑炊でしめるのは、健康的かつ科学的

野菜スープの中には、野菜の持つ豊富で重要な抗酸化成分・ファイトケミカルのポリフェノールやフラボノイドがたっぷり入っています。

前田浩『ウイルスにもガンにも野菜スープの力』(幻冬舎)
前田浩『ウイルスにもガンにも野菜スープの力』(幻冬舎)

加えて、ビタミンCや葉酸、ビタミンK、さらに多くのカロテノイドなども溶け出しています。

野菜のゆで汁や野菜をたくさん入れた鍋物の残りのスープこそ、栄養素の宝庫なのです。昔から味噌汁は具だけでなく汁も残さず飲み干せといわれ、鍋をしたら、最後の雑炊まで食べるのも理にかなっていたのです。

では、火を使わないヒト以外の動物はどうやって植物の栄養を取り入れてきたのでしょうか? 実はヒトとヒト以外の動物とでは、食物である植物の消化力に大きな差があるのです。

植物の細胞壁は、いくつかの繊維質成分からできています。ところが主要成分であるセルロースを消化分解する酵素(セルラーゼという)を、ヒトの消化液は持っていないのです。

一方草食性の動物は、消化管の中にセルロースを分解する微生物をまわせていて、身体の中の消化管で発酵させて分解し、栄養素を吸収できているのです。

人間だけが火を使い、調理して食べるようになったのも、大きな意味があったのかもしれません。

写真=iStock.com

前田 浩(まえだ・ひろし)
医学博士

ハーバード大学がん研究所研究員を経て、熊本大学名誉教授、バイオダイナミックス研究所理事長。大阪大学招聘教授、東北大学特別招聘プロフェッサー。副作用のない抗がん剤の研究で、ノーベル化学賞候補となる(2016年)。