2020年5月末までの期間限定で、オンライン上映中の映画「ママをやめてもいいですか!?」をご存じだろうか。実はこの映画は、現環境大臣小泉進次郎氏に育休取得を決断させる決め手になった作品なのだという。小泉大臣の育休取得を全面バックアップしていたワーク・ライフバランス 代表取締役社長 小室淑恵さんに、大臣が育休を取得するまでのいきさつを聞いた。
映画『ママをやめてもいいですか!?』より
映画『ママをやめてもいいですか!?』より

男性は、出産=ハッピーなことだと思い込んでいる

『ママをやめてもいいですか!?』(以下、ママやめ)は、命・家族・絆をテーマにした映画『うまれる』シリーズの監督、豪田トモさんが、“子育て”にスポットを当てて約3年間、50人以上のママや家族に取材した膨大な映像記録を編集して作られたドキュメンタリー映画だ。取材撮影を進める中で見えてきたのは、多くの母親が育児に苦しみ、孤独感を感じ、そして深刻な産後うつに苦しんでいる、この国の子育ての現状だった。前作『うまれる』の頃から、豪田監督の作品の支援・寄付を行ってきた小室さんは、試写会ではじめて『ママやめ』を見たときに、次のような感想を抱いたそうだ。

ワーク・ライフバランス 代表取締役社長 小室淑恵さん
ワーク・ライフバランス 代表取締役社長 小室淑恵さん(写真提供=ワークライフ・バランス)

「日本における産後の妻の死因1位は、自殺です。その原因と言われているのが『産後うつ』。仕事柄、産後うつのことならよく分かっていると思っていたのですが、この映画を見て、何年も一緒に同じ家庭の中にいながら、これほどまでに男性は、子育てに葛藤している女性の状態というものが分からないんだとショックを受けました。映画内で、妻が孤独感や育児疲れを感じて泣いていた様子を見て、夫が『嬉しくて泣いてるんだと思いました』と答えるシーンがあるのですが、男性に悪気があるとか、仕事の方が心から大事で意図的にそんなことを言っているという感じではないんです。ただただ本当に、日常で妻が抱えている状況というものに気付かないまま、日々が過ぎていってしまっている、そのような男性心理の怖いほどの鈍さが印象的でした」

そこで小室さんが思ったのは、この映画は子どもが生まれる前の夫婦に見てもらわないと意味がないということだった。特に男性は出産イコールハッピーなことだと思い込んでおり、その先の子育てのつらさに目を向けて事前準備をする人がほとんどいない。それなら、誰かがそのことを出産を迎える夫婦に教えてあげたり、この映画を見せてあげたりするなどの働きかけをしない限り、この先いつまでたっても、子育ての状況が変わることはない。そう感じたのである。ちょうどその頃だった。小室さんは、育休を取得すべきかどうか真剣に悩んでいる一人の男性に出会うことになる。それが小泉大臣だった。