伝え方を変えて、「2度」同じ説得をする

テレワーク維持を訴えるときには、1回でなく、2回やるといいですね。説得というのは、何度もくり返せばくり返すほど、基本的には、うまくいくものですから。

とはいえ、「テレワークつづけさせて!」「テレワークつづけさせて!」と連続で2回言っても、上司にはあなたが駄々をこねているようにしか見えません。もうちょっと頭を使いましょう。

簡単なのは、伝える手段を変えることです。たとえば、日中に、対面でお願いをしたら、夕方に、今度はメールで同じお願いをするとか。あるは前日にメールでお願いして、翌日には、電話で同じお願いをするとか。このようなやり方で2回、説得を行えば、うまくいく可能性も高まることが期待できます。

くどさを感じさせない“2重説得”のやり方

テキサス大学のケリー・ステファンズは、148名の大学生に、大学の就職支援サービスを受けるように説得するという実験を行ったことがありました。すべての学生には、2回、サービスを受けるよう説得メッセージが伝えられたのですが、その伝え方を変えてみたのです。ステファンズが設定した実験の条件はこんな感じです。

メールで説得 → もう一度メールで説得
対面で説得 → もう一度対面で説得
メールで説得 → 対面で説得
対面で説得 → メールで説得

実験の結果、「メールで伝えてまたメール」や「対面で伝えてまた対面」というやり方では、あまりうまくいかないことがわかりました。“くどい”と思われたのです。その点、一回目と二回目の伝える手段を変えたときには、説得効果は高まりました。説得では、くり返しが大切なのですが、その伝え方に変化というか、バリエーションをつけることが大切なのですね。

コロナが収束しても、テレワークをつづけたいという人は数多くいらっしゃると思います。ここで紹介するようなテクニックを使いながら、今のうちに社内決裁をとってしまうことをおススメします。

(参考)
Stephens, K. K., & Rains, S. A. 2011 Information and communication technology sequences and message repetition in interpersonal interaction. Communication Research ,38, 101‐122.

写真=iStock.com

内藤 誼人(ないとう・よしひと)
心理学者、立正大学客員教授、有限会社アンギルド代表取締役社長

慶應義塾大学社会学研究科博士課程修了。社会心理学の知見をベースに、ビジネスを中心とした実践的分野への応用に力を注ぐ心理学系アクティビスト。趣味は釣りとガーデニング。著書に『いちいち気にしない心が手に入る本:何があっても「受け流せる」心理学』(三笠書房)、『「人たらし」のブラック心理術』(大和書房)、『世界最先端の研究が教える新事実心理学BEST100』(総合法令出版)、『気にしない習慣 よけいな気疲れが消えていく61のヒント』(明日香出版社)、『羨んだり、妬んだりしなくてよくなる アドラー心理の言葉』(ぱる出版)など多数。その数は250冊を超える。