今一番、社内決済がとりやすい案件
コロナの拡大は、本当に悩ましいですし、だれにとっても不愉快なことですが、テレワークを推進する絶好のタイミング、という観点からすれば、コロナにもほんの少しはいい点もあるということでしょうか。
説得は、タイミングを外すと、絶対にうまくいきません。たとえば、「職場の人間関係を円満にするために、社内旅行や、忘年会などのイベントを増やそう!」というのは、ある意味で、正しい意見ですよね。
けれども、そういう社内説得をするには、時期が悪すぎます。「コロナのせいで会社の業績が悪化しているうえ、三密を避けなければいけないときに飲み会をやろうだなんて、お前は何をバカなことを言ってるんだ!」と怒鳴られてオシマイです。
その点、今の状況なら、「テレワークを今後も維持してください」というお願いは、ものすごくハードルが低くなっています。つまりは、“社内決裁がとりやすい案件”という、ありがたい状況にあるわけです。調査では、今後もテレワークを続けたい人が多いということですので、「それならすぐに社内決裁をとったほうがいいよ」とアドバイスしておきましょう。
イラストや写真をうまく使ってみる
さらに社内説得を成功させるためのテクニックもお教えしておきます。会社や上司に提出する「テレワーク維持」の依頼書や要望書や嘆願書を作るときには、その書類に、イラストや写真をたくさん使うといいですよ。
テキスト(文字)だけでなく、書類の余白には、テレワークで頑張っている人の姿とか、生産性が右肩上がりになっているグラフのイメージですとか、そういうビジュアルをバンバン載せておくのです。実際にテレワークしている社員の現物写真を使うのもいいですね。
単純にテキストだけで必要性をアピールしても、なかなか人の心は動かせません。
ところが、映像イメージがあると、説得効果はすぐにアップさせることができます。簡単なやり方ですよね。文字を書くのが苦手な人なら、なおさら役に立つ心理テクニックです。
カリフォルニア州立大学の学生を対象にして行われたケイラ・フリードマンの実験をご紹介しておきましょう。
フリードマンは、学生に木材クリーナーの製品をお試しで使ってもらうという実験をしてみました。製品には、「吸い込むと危険なので、マスクを着用」という警告文が書かれていました。ところが、テキストのみ(文字のみ)の場合には、マスクをきちんと着用したのは27%にすぎませんでした。
一方、警告文の隣に、「マスクをつけた人」のイラストを載せておくと、何と指示に従った学生が42%に増えたのです。まさにイラスト効果ですね。
社内でテレワーク維持の説得をするときには、イラストや写真も使いましょう。そういうものがあるだけで、意外に説得効果はアップするものですよ。
(参照)
Friedmann, K. 1988 The effect of adding symbols to written warning labels on user behavior and recall. Human Factors ,30, 507‐515.