保護者の職業で線引き?

働く親としては、もちろん大打撃です。しかし、子どもの感染や通勤による自身の感染に不安をもっている人たちからは「休園と言ってもらったほうが、会社に休むことを認めてもらえる」と歓迎する声があるのも事実です。家族に重症化リスクの高い高齢者がいる場合はなおさらです。

それにしても、「原則休園」でも保育してもらえる家庭の線引きには、さまざまな異論があると思われます。渋谷区の4月7日時点での「特別保育」の対象は「世帯全員が警察官、消防官及び医療従事者のご家庭等」と書かれていましたが、保育・介護等の福祉施設の従事者がなくていいのか、ライフラインを支える数々の事業も含めないと、あちこちで困った事態が発生するのではないかと懸念されます。

国の「対処方針」では、「ひとり親家庭」も含まれていました。仕事に行けなくなることで即座に生活が逼迫する家庭、保護者が心身の病気を患っている家庭などへの配慮も求められるでしょう。保育を提供しないのであれば、他の方法で支援をしないと、子どもの福祉が損なわれてしまいます。

「何とかなる家庭」が協力することで苦しい家庭を助ける

「登園自粛」の自治体でも、厳しい対応、ゆるやかな対応が織り混ざってくるでしょう。おそらくこういった線引きの範囲も、今後、各自治体で試行錯誤が重ねられ調整されてくるものと思われます。

そのとき、自治体では、固定的な線引きを強行するのではなく、必要に応じて家庭の個別の事情も汲み取って対応してほしいと思います。家庭と子どもの状況を理解している保育園の意見も重要です。

「そんなことをしていたら役所がパンクしてしまうよ」という意見もあります。パンクさせないためには、どうすればいいのか? それは、むしろ利用者の側の問題かもしれません。「なんとかなる家庭」が進んで自粛に協力すれば、どうしても必要なニーズに対応する余地が生まれるはずです。

苦しい家庭は遠慮せずに役所や保育園に相談することができて、自分たちでなんとかできそうな家庭はできるかぎり自治体や保育園に協力する、それが、私たちの社会を守ることにつながります。