歯周病予防はむし歯予防よりもある意味シンプル

歯周病ケアの方法を大月先生に聞いた。歯周病は歯の周りにプラークが堆積することで起きるので、日々のプラーク(歯垢)除去が大切になってくる。歯ブラシを使ったブラッシングだけでなく、デンタルフロスなどの歯間清掃具を使ってプラークを確実に落とすことが重要だ。歯間のプラーク除去率は歯ブラシだけでは61%だが、フロスを併用すると79%、歯間ブラシを追加すると85%にまで高まるという(出典:日歯保存誌.48(2),2005,272‐277)。

「特に奥歯や歯と歯の間の磨き方は難しいです。歯科衛生士か歯科医師に丁寧に時間をかけて教えてもらい、人生の早い段階で正しい歯の磨き方を習得することをおすすめします。歯周病は自覚症状がなく、歯科医師でも自分の歯茎の状態は検査してもらわないとわかりません。定期的に歯科医院で専門的なクリーニングを受けることも極めて重要です」

ちなみに、歯周病ケアはプラークに対して、シンプルに徹底的なアプローチが必要なのに対し、むし歯は歯周病よりも複合的なアプローチが必要になってくるという。

「むし歯は酸によって歯に穴があく状態、つまり“口腔内の酸性環境をコントロールできていない状態”です。酸を発生させる“むし歯菌”がショ糖を好むため、歯ブラシをしっかりしていてもショ糖の摂取頻度や量が多かったり、“ダラダラ食い“をしていたりすれば虫歯リスクが格段に上がります。甘いものだけでなく、炭水化物、つまりごはんやパン、ポテトチップスなども糖類を含んでいるため、虫歯リスクを上昇させます。また、レモンや梅干し、クエン酸など酸が強いものを好むこともリスクを高めます」

アプローチは少し異なるとはいえ、歯周病もむし歯も、毎日の清掃が大切であることは共通だ。

「女性の場合、閉経でエストロゲンの分泌が低下すると、歯を支える歯槽骨ももろくなる可能性が指摘されています。歯周ポケット内では炎症を引き起こす物質がつくられ、歯周炎の進行が加速されると考えられています。閉経が歯周病リスクを高めるかどうかはわかっていませんが、この年代は歯の喪失リスクも上がっているので注意が必要です。喫煙も明らかに歯周病リスクを上昇させます」

「世界でもっとも一般的な病気」としてギネスブックにも掲載されたことがある歯周病。人生100年時代を幸せに生き抜くためにも、歯周病ケアの重要性を改めて考えたいものだ。

写真=iStock.com

中島 夕子(なかじま・ゆうこ)
フリーライター&エディター

ヘルス&ビューティ系の記事を中心に、Web、雑誌、単行本などの執筆を手掛ける。