安価かつ耐久性に優れたプラスチック素材は、先に挙げた日用品のほかにもペットボトル、服、さまざまなパッケージに多用されており、私たちの生活になくてはならない存在だ。日本はプラスチックの生産量が世界第3位で、世界規模でみると年間生産量は過去50年で20倍にも増大したという。一方で、使い捨てされやすく、きちんと処理されなかったプラスチックは、海や川に流れてやがて海洋ゴミと化し、深刻な状況を生んでいる。

(左)魚網が絡まって溺死したオサガメ。©Michel Gunther(右)島に流れ着いた大量のプラスチックゴミ。豊かな自然との対比が痛々しい。©GregArmfield
(左)魚網が絡まって溺死したオサガメ。©Michel Gunther(右)島に流れ着いた大量のプラスチックゴミ。豊かな自然との対比が痛々しい。©GregArmfield

現在すでに海洋ゴミとして確認されているプラスチックは、世界で合計1億5000万t。ここに新たに年間800万t(重さにしてジャンボジェット機5万機相当)が流入していると推測されているのだ(出典:WWFジャパン ウェブサイト)。

天文学的数字で増え続けるプラスチックゴミは、観光業や漁業に大打撃を与えただけでなく、海に住む多くの生き物の自由と命を奪った。また1度、海や川に放出されたプラスチックは、分解されるまでに数百年以上かかるといわれ、さらに世界経済フォーラムでは、海に流出しているプラスチック海洋ゴミは現在、アジア諸国によるものが全体の82%を占めるとされている。2050年には「住んでいる魚の数より、プラスチックの数が上回る」ともいわれており、より深刻化するのは明らかだ。

見えないところで起こること、それはひとごとではない

プラスチック海洋ゴミの問題は、個人レベルで解決できないことのようにも思える。けれど、企業がやるのも国がやるのも、まずは個人の意識からだ。今私たちにできることは、やはり毎日ほぼ無意識で使っているプラスチックゴミを意識して減らすこと。

それには必要のないストローは断る、ペットボトルを買うのをやめてマイボトルを活用する、レジ袋の代わりにマイバッグを持ち歩くなど、最初は面倒に感じることもあるかもしれないが、これもすべて習慣次第。優れたサステナブル商品も増えてきた昨今、楽しみながらサステナブルに取り組むことで、さらなる意識の向上と、効果的かつ長期的に海洋汚染を食い止めることが期待される。

はじめの一歩として、サステナビリティを実行している団体のホームページを見てみるのもいいだろう。たとえばWWFでは、プラスチックの大幅削減を前提とした資源循環型社会を実現するための政策を提言。個人で直接寄付をすることもできる。日本で、そして世界で実施されているさまざまな活動を知ることで、自分が今どうすればいいのかが明確になっていくのも大切なプロセスだ。

サステナビリティは今すぐ結果が出るものではないかもしれない。けれど、ひとりひとりが一刻も早く取りかかり、続けていくことが、緊急に求められている。

※表示価格はすべて税抜きです。

撮影=坂根綾子

乙部 アン(おとべ・あん)
フリーエディター/執筆家

新ファッションウェブマガジン「LIV,」女性ファッション誌のフリーエディターをしながら執筆家としても活動、いくつかの連載を掛け持ちする。アメブロやnoteなどのブログでは、大人の女性に役立つファッション・仕事・サステナブル・ライフスタイル・独自の人生哲学を発信。