「今がよければいい」ではなく、自分ごととして捉えるサステナビリティとは? 地球のために、そして大切な命のために。私たちに何ができるかを考えよう。
1.ファッションをとおして社会に貢献する
「ファッションが地球を汚す」そんな時代は終わった

サステナブルという言葉がもっとも飛び交っているのは、きっと今のファッション業界に違いない。大量の水を使って生地を洗ったり、たくさんの布地の廃棄が出たりするこの業界は、今やサステナビリティがひとつのトレンドのようになっている。しかしながら、これはきっと一過性のものではない。今から約30年前、早々と“持続可能な”未来について提唱していたキャサリン・ハムネット氏はこう語る。

(左)サステナブル・ファッションの草分け的存在、キャサリン・ハムネット氏。(右)2019年10月に行われた氏のデザイナー40周年イベントの様子。
(左)サステナブル・ファッションの草分け的存在、キャサリン・ハムネット氏。(右)2019年10月に行われた氏のデザイナー40周年イベントの様子。

「当時、世の中は環境問題に無関心どころの話ではなかったわ。『そんなくだらないことを言うなら、さっさとコレクションをたたんで消えてくれ』とまで言われたの」。けれど、「自分のため、そして家族のためを考えれば、環境に配慮するのは特別なことではない」とハムネット氏は続ける。そんな彼女に、私たちができることは何かをたずねると、答えはとてもシンプルなものだった。「意識を高め、それを購入行動に反映させること」。たしかに、私たちはそのような考えを持つファッションブランドを知り、選び取ることで、今すぐにでもサステナビリティに貢献できるのだ。

何を選ぶかで社会貢献になる世界

“清く正しいダイヤモンド”にこだわるダイヤモンドブランド、「フォーエバーマーク」では、原石の採掘方法から現地の人の働き方、そして自然環境にまで徹底的に配慮。見た目に美しいだけでなく、関わる人すべてを幸せにし、誇りを持って身につけられるダイヤモンドだけを厳選して届けている。

(左)フォーエバーマークは、現地の女性たちの雇用拡大にも尽力。(右)アフリカ南部のサイの保護プロジェクト支援のために、企業として投資活動も行っている。
(左)フォーエバーマークは、現地の女性たちの雇用拡大にも尽力。(右)アフリカ南部のサイの保護プロジェクト支援のために、企業として投資活動も行っている。

一見華やかに見えるファッションの世界。素敵に着飾ることはこれまでサステナブルとは真逆の位置にあったように思う。けれどこれからは、環境に配慮しないおしゃれなど存在しない。美しい星、そして豊かな資源があってこそのおしゃれ、という新境地を、私たちは追求し始める必要があるのだ。

2.愛用のコスメを見直してみる
美しさと環境保護は今や両立可能なものに

ビジネスシーンにおいてはもちろんのこと、女性の毎日にメイクアップは欠かせない。毎シーズン新たに登場するアイシャドウや進化したファンデーションには確かに気分が上がるもの。競うように並べられた化粧品のパッケージだって、大切な“美の成分”のひとつだ。

サステナビリティの有識者でもある創設者のローズ・マリースウィフト氏。
サステナビリティの有識者でもある創設者のローズ・マリースウィフト氏。

だが、ご存じだろうか? そんなきらびやかな世界は、繰り返される動物実験をはじめ、プラスチックパッケージの大量廃棄、自然破壊をしかねない製造工程で支えられている可能性があることを。

そこで1度は頭をよぎるのが、メイク自体が悪いものだとする考え。けれど、すべてを排除しようとすると、私たちの生活は成り立たない。自身をないがしろにすることで“持続可能”をめざしても、これもまたサステナブルとはいえないのである。自分も他人も、そして自然にも心地よく。これが現代におけるサステナビリティのあり方なのだ。

そのためには、健康と美、そして環境に配慮した商品を選ぶことが第一。たとえば2019年に創設10周年を迎えたコスメブランド「rmsbeauty」は、リサイクル可能なパッケージを使用し、食品グレードの有機的な成分にこだわっている。さらに人にも環境にも持続可能な美しさを実現してくれるクリーンビューティ。そのような商品を手に取ってみることもまた、サステナビリティに参加する大きな一歩だ。

きれいになることと地球を守ることは両立できる。私たちの日々の当たり前を見直すことこそが、地球の未来を決めるのだから。

3.正しい知識で意識を高める
まずは正しく知ること! 意識の低さが環境汚染の元凶

誰も自然を破壊したいなんて思っていないし、地球に悪いことを率先してやりたい人なんていない。むしろ多くの人ができるだけクリーンな地球になってほしい、そう願っているのに、事実ここまで環境が悪化してしまったのは、ひとえに私たちの知識不足が根底にある。「知るだけじゃダメ、行動しないと」という考えはもっともだが、そのために必要なのが正しい知識だ。正しく知ることでまずは意識が変わる。意識が変われば自然と行動が変わる。それをひとりひとりが実行することで、世界は変わるはずだ。

行動を起こすためには、まず現状を知ること。今私たちの豊かな生活が、どんな犠牲を払ったうえで得られたものなのかを正しく知って、そしてこの先、自分の家族や大切な人が暮らす未来が、どのようなものであってほしいかを考える。それだけでも日々選ぶ食材、製品が変わってくるはず。

サステナビリティは何も特別なことではない。すべては私たちの意識からスタートし、この世界はつくられているはずで、これまでわれわれ人間が環境に対し無頓着だった結果が、今になって海水の汚染や天然エネルギーの枯渇として表れているだけなのだ。

サステナビリティはそれをする人とそうでない人に分かれるようなものではなく、国籍も性別も年齢も関係なく、それぞれがおのおののペースで一生取り組んでいくこと。知らなかったでは済まされない、世界共通の問題なのである。

4.犬や猫の保護活動に参加してみる
飼う人も、飼わない人もできることがたくさんある!

私たち日本人の感覚では、犬や猫を飼うとなったらペットショップに行くのが定番だけれど、実は先進国でそれをしているのはかなり少数。現在、日本国内で殺処分される犬猫の数は年間約30万匹。これだけの命が日々奪われていることを、私たちはもっと重く受け止める必要がある。

千葉のARChアニマルレスキューちばでは、保護犬・保護猫の里親募集中。http://arch2013.org
千葉のARChアニマルレスキューちばでは、保護犬・保護猫の里親募集中。

捨てられる犬猫は、少し成長しただけでペットショップで売れ残ったり、悪質ブリーダーの飼育崩壊、そしてなんと飼い主から「かわいくなくなった」「うるさい」という理由で直接、保健所や保護施設に持ち込まれることもあるという。

このショッキングな出来事に対し、実際に行動を起こしているのが保護活動をしている人たち。私たちにできることは、犬や猫を家族に迎えたい、そう思ったときは、ペットショップではなく保護施設や保健所へ行くこと。そうやって、ひとりひとりが“買う”ではなく“引き取り”をすることで、殺処分ゼロをめざせるともいわれているから、すべての命を救うことは、決して夢物語などではないのだ。

そして犬や猫を飼えない環境下にいる人でも、実はできることがまだまだある。たくさんの命を預かる保護活動には、まずは多くの人手が必要。空いた時間に信頼できるシェルターに赴き手伝いをするのもいいだろう。また、活動にはエサ代のほか去勢・避妊や病気の治療などに多額の予算も必要。できる範囲での募金や物資を寄付するなどの後方支援も、小さな命を救うための大きな一歩だ。

5.日々の生活から地球温暖化を防ぐ
毎日しているある行動が省エネ&CO2削減に

地球温暖化が急速に進んでいることは、真夏の異常な気温上昇や、台風が多発している日本の現状を見れば痛いほどわかる。もちろんこれは世界的規模の大きな問題で、ひとりひとりがどうにかしたところで、すぐには解決できない絶望的状況とも思えてしまう。

世界、日本、東京の年平均気温偏差の推移

でも実は、温暖化防止は、日々私たちが行っている“ある行動”と、とても密接だ。たとえば電気をこまめに消す、使っていないコンセントを抜く、室温は冷やしすぎず暖めすぎない、公共交通機関(電車やバス)を活用する……。これらは、まさに節約とイコールではないだろうか。つまり私たちは節約に取り組むことで、同時に温暖化防止にも大きく貢献していることになる。

また、冷蔵庫やエアコンは、10年前の製品を買い替えるだけで、年間5000~1万円の電気代が節約できるといわれており、これは100~200kgのCO2の削減につながる(出典:しんきゅうさん)。東京都なら省エネ機能の高い家電の買い替えに最大2万1000円相当のポイント付与を実施、省エネ対策をバックアップする制度もある。

節約も温暖化防止の行動も、決して無理してやることではない。習慣として上手に取り入れることで、家計にも地球にもやさしい、そんなサイクルが出来上がるはず。

6.食品ロス削減に積極的になる
その「ちょっと」がチリも積もって社会問題に

わが国の食品ロスは年間643万tともいわれ(農林水産省・環境省 平成28年度推計)、これは国連世界食糧計画(WFP)による食糧支援量の1.7倍。毎日10tの大型トラック約1760台分を廃棄していることになり、年間ひとり当たりに換算すると51kgもの食品を捨てていることに。さらにその廃棄は、全体の半分が家庭から出るものだというから驚きだ(出典:消費者庁HP)。

個人レベルの食品ロスは、主に食べ残しや買いすぎといったもの。ならば今すぐ防げると思いきや、これも意識が低ければ何げなくやりすごしてしまうことでもある。

家庭における食品ロスの内訳

そして食品ロスは環境だけを苦しめているわけではない。家計の圧迫や廃棄処分のための税金投入など、自分たちの経済状況にも悪影響を及ぼしかねないのだ。

私たちが今すぐできることは、日々の買い物を適切なときに適切な量に収めること。「安いから」「面倒だから」とまとめ買いしても、結局捨ててしまうのであれば財布にも環境にもマイナス。ライフスタイルに見合った量を把握すること、そして「もったいない」という日本独特の感覚で、食品ロスをぐっと減らすことができるはずだ。

7.フェアトレードの製品で楽しみながら支援する
当然の権利を正当に。働き方を支援する

フェアトレードとは、その名のとおり公正な取引のこと。募金や寄付ではなく、経済活動によって貧しい人々の自立を促す取り組みでもある。途上国で生産された品が驚くような安価で手に入ることがあるが、その安さを実現するために、暮らせないほどの低賃金だったり、生産者の健康に悪影響が出るようでは、それはフェアとはいえない。

チョコレートの原料、カカオの生産者。©Miki Alcalde/ピープルツリー
チョコレートの原料、カカオの生産者。©Miki Alcalde/ピープルツリー

実際にフェアトレードを行っている企業の商品を買うことで、私たちは対等な取引に賛成・貢献したことになり、その売り上げが現地で働く人への正当な賃金や、健全な生活を保障する一助となるのだ。

ただ単に安いからといって買うものを選んでいると、時には強制労働や自然破壊の片棒を担ぐ羽目になるかもしれない。とにかく「自分だけが得する=幸せ」という考えはもう古い。自分が買うもの、使うものがどのようにしてつくられているのか、そしてその商品が生み出されるまでの過程が世の中にとってどのように影響を及ぼすか、プラスになるのか、もしくはマイナスなのかを私たちは把握しておく必要がある。それは自然や他者の力を借りて生きている人間としての責任であり、義務になりつつあるのかもしれない。

8.エコファー、エコレザーの進化を知る
ファッション界にも大革命! エコとフェイクが違う理由

「リアルなものが高級」。そんな考え方がスタンダードだった、ファッションにおけるファーやレザーの存在。しかしこの数年で、それもすっかり時代遅れの考えとなった。

今や動物の命を脅かす必要のないエコファーやエコレザーの進化はすさまじい。見た目にはその違いがわからないほど上質なのは当然のこと、非常に肌ざわりがよくなめらかで、おまけにお手入れも簡単! 環境と資源に配慮しつつリアルなものよりもずっと時間と予算を投資してつくられているものも少なくない。

最近は名だたるビッグメゾンでも「リアルファーを使わない宣言」をしたところも多く、サステナブルを掲げることは一種のトレンドにもなっている。今はそれが話題性や人気、ステータスに直接つながる一大ビジネスになるのだ。サステナブルにとってビジネスは重要な要素。もっと言うと、実際、理由や取っ掛かりは何だっていい。やらないよりやる、そしていち早く取り組むことが、今の地球環境にとって最善なのは間違いない。

また、この分野で“エコ”は“フェイク”とは違った意味を持ち、生産過程で必要な資源の使い方や、フェアトレードの項で記したような労働力への対価にもきちんとこだわっているブランドも多い。エコファー、エコレザーはニセモノではない、立派な新素材なのだ。

9.ボランティアで現状を体感してみる
「ちゃんと」よりも「ずっと、長く、ゆっくりと」

ニュースや新聞で情報に詳しくなるだけでなく、実際に現場を見ることはとても大切。日本中にボランティア団体は多くあるけれど、参加する際に大事なのは、「無理をしない」ということ。

(左)子ども食堂に関心のある人が参加できる「しながわ子ども食堂ネットワーク」。http://shinashakyo.jp/kodomonet(右)子どもたちに人気のおかずを試食で出したもの。
(左)子ども食堂に関心のある人が参加できる「しながわ子ども食堂ネットワーク」。(右)子どもたちに人気のおかずを試食で出したもの。

誰かのために行動したいという気持ちはとても素晴らしいことだけれど、自身に無理を強いているようでは本末転倒。当事者に迷惑をかけてしまうことだってある。誰かを助けられるのも、まずは健全な自分あってこそ。信頼できる団体を見つけたら、できる範囲で参加&支援をしてみるだけでいい。

そして、好きなことや得意なことをボランティアで生かしてみるのもオススメ。なぜなら、ボランティアは当事者の幸せと、あなたの苦労を引き換えにするものではないからだ。そんなちょっとした心構えが、困っている人たちを一時期だけでなく、長期間ゆっくりとバックアップできるコツでもある。

たとえば全国で深刻な問題となっている子どもの孤食・貧困問題。これを支援する方法のひとつとして子ども食堂がある。ある程度決められたスケジュールのもと簡易食堂を開き、子どもたちや時にはその親にも、ごく安価、もしくは無料で食事を提供するというものだ。もし、あなたが料理好き、子ども好きというのなら、このようなボランティアに参加してみるのもいいだろう。得意な、あるいは好きなことで応援をするのが、“持続可能な”幸せを呼び寄せるに違いないのだから。

10.身近なところからプラスチック海洋ゴミを減らす
膨大に増え続けるプラスチック海洋ゴミ

「プラスチックストローを使わない」「レジ袋削減」。サステナブルに興味がない人も、そんな報道をどこかで耳にしたことがあるだろう。

安価かつ耐久性に優れたプラスチック素材は、先に挙げた日用品のほかにもペットボトル、服、さまざまなパッケージに多用されており、私たちの生活になくてはならない存在だ。日本はプラスチックの生産量が世界第3位で、世界規模でみると年間生産量は過去50年で20倍にも増大したという。一方で、使い捨てされやすく、きちんと処理されなかったプラスチックは、海や川に流れてやがて海洋ゴミと化し、深刻な状況を生んでいる。

(左)魚網が絡まって溺死したオサガメ。©Michel Gunther(右)島に流れ着いた大量のプラスチックゴミ。豊かな自然との対比が痛々しい。©GregArmfield
(左)魚網が絡まって溺死したオサガメ。©Michel Gunther(右)島に流れ着いた大量のプラスチックゴミ。豊かな自然との対比が痛々しい。©GregArmfield

現在すでに海洋ゴミとして確認されているプラスチックは、世界で合計1億5000万t。ここに新たに年間800万t(重さにしてジャンボジェット機5万機相当)が流入していると推測されているのだ(出典:WWFジャパン ウェブサイト)。

天文学的数字で増え続けるプラスチックゴミは、観光業や漁業に大打撃を与えただけでなく、海に住む多くの生き物の自由と命を奪った。また1度、海や川に放出されたプラスチックは、分解されるまでに数百年以上かかるといわれ、さらに世界経済フォーラムでは、海に流出しているプラスチック海洋ゴミは現在、アジア諸国によるものが全体の82%を占めるとされている。2050年には「住んでいる魚の数より、プラスチックの数が上回る」ともいわれており、より深刻化するのは明らかだ。

見えないところで起こること、それはひとごとではない

プラスチック海洋ゴミの問題は、個人レベルで解決できないことのようにも思える。けれど、企業がやるのも国がやるのも、まずは個人の意識からだ。今私たちにできることは、やはり毎日ほぼ無意識で使っているプラスチックゴミを意識して減らすこと。

それには必要のないストローは断る、ペットボトルを買うのをやめてマイボトルを活用する、レジ袋の代わりにマイバッグを持ち歩くなど、最初は面倒に感じることもあるかもしれないが、これもすべて習慣次第。優れたサステナブル商品も増えてきた昨今、楽しみながらサステナブルに取り組むことで、さらなる意識の向上と、効果的かつ長期的に海洋汚染を食い止めることが期待される。

はじめの一歩として、サステナビリティを実行している団体のホームページを見てみるのもいいだろう。たとえばWWFでは、プラスチックの大幅削減を前提とした資源循環型社会を実現するための政策を提言。個人で直接寄付をすることもできる。日本で、そして世界で実施されているさまざまな活動を知ることで、自分が今どうすればいいのかが明確になっていくのも大切なプロセスだ。

サステナビリティは今すぐ結果が出るものではないかもしれない。けれど、ひとりひとりが一刻も早く取りかかり、続けていくことが、緊急に求められている。

※表示価格はすべて税抜きです。