ルイザが独身主義を貫いた理由

——ルイザ自身は生涯独身を通しますが、ジョーは物語序盤で「オールドミスのままでいればいい」と言っていたのに、やがてベア先生を受け入れます。映画の中でも、出版社の編集者が「小説のラストは必ず結婚してハッピーエンドに」と要求するシーンが印象的です。

【谷口】若草物語』第1巻の反響がとても大きく、ジョーと隣の屋敷に住む少年ローリーのその後について、「2人はどうなるの?」という、2人の結婚を望む声がとても多く寄せられたんです。でもルイザは、2人は絶対に結婚させないと思っていた。「対等な男女の友達」であり得ると考えていたのですね。

——小説で結局ジョーは、かなり年上の教師・ベア先生と結婚しますね。

【谷口】伝記的小説とはいえ、そのあたりはやはりフィクションなのですが、ルイザ自身も年上で尊敬できる男性が好きだったのかもしれません。最終的には独身を貫きますが、ヨーロッパ旅行中に出会った青年との関係など、ロマンスやプロポーズされた経験がなかったわけではないのです。ただ、独身主義が一番自分に合っていたので、それを選択しただけなのだと思います。

与えられるより与えることが幸せだった

——映画の中で印象深かったのは、「結婚だけが幸せではないけれど、でもすごく寂しい」とジョーが泣く場面。結婚願望はないけれど、1人で自分のためだけに生きて行くことに限界を感じている人の心に刺さると思います。ルイザ自身もそのように考えていたのでしょうか?

【谷口】そう思っていたのだと思います。それは寂しいですよ! でも、結婚しても寂しい人はいますけどね。

ジョーはベア先生と一緒に自分たちの学校を開き、たくさんの子供たちを受け入れます。そういう風に若い人を育てるということはすごく楽しい。ルイザ自身も1人で稼いで家族を養ったり、後に妹メイが産んだ娘を引き取ったりと、必ず誰かに何かを「与える人」でした。人から与えられるより、与えることが彼女にとって大きな幸せだったのではないでしょうか。