映画「ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語」が米アカデミー賞で多部門の候補になるなど、世界的ベストセラー『若草物語』が再び注目されています。「結婚だけが女の幸せのゴール」だとされていた時代に、「生き方は自分で決める」女性を描いた原作者のルイザ・メイ・オルコット。講談社で同作の翻訳を手がけるなど、オルコットに造詣の深い翻訳家の谷口由美子さんに、今なお色褪せない『若草物語』が伝える女性の生き方についてお話を聞きました。

女の幸せは結婚だと思われていた時代に

——子供の頃に見たテレビアニメや、過去に何度か製作された実写映画をとおして四姉妹の人生をつづる『若草物語』の内容は知っているつもりでした。しかし最近、気鋭の女性監督グレタ・ガーウィグが再度映画化した「ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語」を見て、「女性の仕事」「結婚と経済」という現代女性が抱えるテーマに正面から斬り込む内容に、「こういうお話だったのか」と新鮮な驚きを覚えたところです。この物語の第1作目が書かれたのは明治元年(1868年)ですが、今読んでも全く違和感がありません。

翻訳家 谷口由美子さん
翻訳家 谷口由美子さん

【谷口由美子さん(以下、谷口)】19世紀の終わりと言えば、「女の幸せはとにかく結婚である」と当たり前に思われていた時代です。次女のジョーはそれに反発しているんですよね。結婚はゴールの1つではあるけれど、もしそれが「女性の唯一のゴール」だとしたら、ウエディングベルが鳴ったあと、何もすることがないなんてバカみたい。当時は誰もそんなことを考えなかったのですが、『若草物語』を読むと、ジョーはそう考えていたことがよく分かります。