女性リーダーならではの利点
南極で女性リーダーならではの利点はあったのだろうか。
「私はグイグイ人を引っ張るタイプではなく調整型です。極地のような極限環境では人間関係が難しくなりがちで、調整型のリーダーシップが適しています。主に全隊員が職務に集中して、完遂できるようサポートするのが仕事でした」
特殊な環境で、多様で大きな組織をまとめる仕事は、リーダーとしての貴重な経験になったのだという。
「隊員は仕事も立場もさまざまです。昭和基地に到着する前日、隊長としてみんなに『無意識のバイアス』について話しました。各人がプロで、立場が違えば考え方も違う。対立したときは、そこに思いを馳せて、乗り切ってもらいたいと思いました」
心残りは多忙すぎて自ら南極の堆積物サンプルを採取ができなかったこと。次は研究者として平隊員で、と南極再訪へ意欲を見せた。
文=モトカワマリコ 撮影=荒井孝治
1967年北海道生まれ。海洋研究開発機構・地球表層システム研究センター・センター長。名古屋大学大学院時代から研究船に乗り海洋環境を研究し、33次夏隊で2人目の女性隊員として南極へ。博士号取得後、現機構に就職。観測船の研究チーム主席も担う。2018年11月から19年3月まで、60次夏隊で女性初の夏隊長として2度目の南極訪問を果たす。