2019年はじめ、プロスキーヤーで登山家の三浦雄一郎氏の南米最高峰登頂にドクターストップをかけた国際山岳医。86歳の冒険家が信頼するドクターが、今あるべき山岳医療について語った。
大城和恵●国際山岳医、1967年、長野県生まれ。東京の大学病院で勤務後、2002年に北海道に移住。10年に国際山岳医資格を取得。11年、同病院に山岳外来を開設。12年より冒険家・三浦雄一郎氏のチームドクターに。同氏のエベレストやアコンカグア登山に同行。

日本人初の国際山岳医

大城和恵さんは、日本人初の国際山岳医として、世界最高峰を狙う登山隊のチームドクターを務める。自身も登山経験が豊富なアルピニストというので、たくましいアスリートを想像していたが、実際は明るい笑顔が人懐っこい、小柄でチャーミングな女性だ。

「2018年、プライベートでエベレストに登りました。私費で自分のために登っているのに、高地で具合が悪い人がいると放っておけないんです。自分だけ登頂すればいいはずが、いつの間にかその場の全員を無事、下山させることに目的がすり替わってしまって、職業病ですね(笑)」

山にいないときは、北海道の病院に開設した「山岳外来」で、健康に不安のある登山者の治療や相談に応じている。そこでも世界最高峰へ挑む登山隊での経験は役立つという。

「三浦さんとご一緒させてもらうと、高山での高齢者が大変なポイントがわかるので、勉強になりますね。患者さんに具体的なアドバイスができますから」