“伝統的な男らしさ”は男にとっても有害

全米心理学会が昨年公開した「男らしさについてのガイドライン」によれば、心理学の観点から、競争力や優位性、攻撃性を特徴とした伝統的な男らしさは、男性自身に有害であると指摘。臨床医の役割は、男性に対し、こうした有害のイデオロギーを捨てさせつつ、勇気やリーダーシップなど潜在的にポジティブな面に柔軟性を見いだすように促すことだと強調している。

さらには、時代の変化に伴い、男性と女性の間で昼間(仕事)に期待されることは、それほど違いがないとした上で「男性を変えることができるなら、世の中を変えることが可能になる」と結んでいる。これらから浮かび上がるのは、伝統的な男らしさを追求するあまり、精神的なダメージを受けやすく、心身に悪影響を与えるので、男らしさから解放されれば、世間も変わるということ。

女性への悪影響も大きい

あくまでも米国の学会が提唱したケースではあるが、「男らしさ」を求められることが目立つ日本男性に当てはまる点は多いはずだ。

さすがに「男子、厨房に入るべからず」は死語の部類に入っていると信じたいが、「男だけが昼間、働いてナンボのもの」「男に育児(育休)なんて必要ないだろ」「常に女性より優位であるべき」などは、いまだに根強く残る価値観だ。筆者の周りを見ただけでも、この価値観にとらわれ、苦しんでいる日本男性の話は40代、50代を中心によく聞く。

こうした価値観があるがゆえに、相対的に「女性は結婚したら、仕事を辞めるべき」「女性に高学歴は必要ない」「夫より妻の方が高収入なのは恥ずかしい」などの見解が今も根強く存在する。ここ数年、大学の医学部入試で、女子の得点を操作するなどの不正が発覚したのも、この価値観の延長線上にあると言っても過言ではなかろう。

写真=EPA/時事通信フォト

小西 一禎(こにし・かずよし)
米国在住・駐夫 元コロンビア大学大学院東アジア研究所客員研究員 共同通信社政治部記者

1972年生まれ。7歳の長女、5歳の長男の父。埼玉県出身。2017年12月、妻の転勤に伴い、家族全員で米国・ニュージャージー州に転居。96年慶應義塾大学商学部卒業後、共同通信社入社。3カ所の地方勤務を経て、05年より東京本社政治部記者。小泉純一郎元首相の番記者を皮切りに、首相官邸や自民党、外務省、国会などを担当。15年、米国政府が招聘する「インターナショナル・ビジター・リーダーシップ・プログラム」(IVLP)に参加。会社の「配偶者海外転勤同行休職制度」を男子として初めて活用し休職、現在主夫。2019年1月~9月、米・コロンビア大学大学院東アジア研究所客員研究員。研究テーマは「米国におけるキャリア形成の多様性」。ブログでは、駐妻をもじって、駐夫(ちゅうおっと)と名乗る。世界中の日本人駐夫約60人でつくるフェイスブックグループを主宰。