秋の転勤シーズン、NYで駐夫をする小西一禎さんの周囲でも多くの出入りがあったとのこと。転勤は家族への負担が大きく、女性よりも男性のほうが負担を感じていることが明らかになっている。なぜそうした優しくない転勤が発生するのか、日米の比較から明らかにするとともに改善の可能性を探る。
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米国では希望者だけが転勤する

サラリーマンや公務員にとって、避けては通れない問題のひとつが転勤だろう。米東海岸に暮らす私の周りでも、秋の転勤シーズンともいえる9月は、日本への本帰国、あるいは新たに引っ越して来たファミリーが盛んに出入りした。安定した雇用と引き換えに「辞令1枚」で国内外での転勤を強いる企業の慣行は、日本特有のもの。基本的に希望者だけが転勤する米国とは、だいぶ様相が異なっている。

冒頭から筆者の話で恐縮だが、1996年に社会人となった私自身、これまでの転勤歴は3度。いずれの転勤も、新たな赴任地・部署は希望に沿っていた上、当時は独り身だったこともあり、特段モノも申さずに受け入れた。2カ月ほど前に内々で通告されたため、準備期間も十分にあり、関係先への挨拶周りや送別会出席には支障がなかったと記憶している。

労働政策研究・研修機構が2017年に実施した調査によれば、国内転勤を打診した時期を企業に尋ねたところ「2週間超から1カ月前」が34.9%に上り、最も多い。以下「1カ月超から2カ月前」の32.5%、「1週間超から2週間前」の13.3%と続いており、かなり直前に命令が出される事例が目立っているとの印象を受ける。