残業時間大幅減なのに業績はアップ

別の知人からは、営業部門の改革の話も聞きました。

その会社では、日中は取引先を回り、夕方に帰社してから書類作成が始まるらしく、会社を出るのはいつも夜8時とか9時。

そのため、小さな子供を持つ女性社員には担当を持たせることができず、それで補助業務しか任せてもらえない女性社員たちの不満がたまっていたそうです。

そこで、Wrikeなどのプロジェクトマネジメントツールを使って進捗管理を共有したり、Slackのようなチャットツールを使うことで、朝だけ定時に集まってミーティングをしてあとは直帰できる体制に変えたのです。

女性スタッフにも担当企業を受け持ってもらうことができ、結果彼女たちの士気も向上。残業時間が大幅に減ったにもかかわらず業績はアップしました。

その成果は社長の目に留まり、同様のワークスタイルが他の部門にも採用されたそうです。そして「女性が働きやすい職場」とネットの就職サイトでも高評価で、新卒も中途も含め優秀な女性社員の獲得に成功しているとのことです。

子連れ出勤の男性社長も

あるいは、創業時からホワイトな環境を作っている会社もあります。

子連れ出勤を奨励し社長である本人(男性)が率先して子連れ出勤をしているそうで、その彼は会社がまだ小さい時からキッズコーナーや女性の更衣室兼休憩室を作っていたそうです。

そのおかげか、仕事と子育ての両立ができず大手企業を辞めざるを得なかった優秀な女性が多く応募してくれるようになり、地方都市にある企業にもかかわらず人材不足とは無縁だそうです。

特に人手不足の昨今、中小企業が優秀な人材を採用し、つなぎ留めるのは非常に厳しいものがあります。

そして労働人口が減少していく未来においては、やはり女性人材の活用は待ったなしです。

実際、多くの企業の就業環境は男性目線で作られていますから、女性が安心して長く働ける環境を整備することは、優秀な女性人材の確保につながります。

反対に、妊娠・出産・子育てで働き方の制約を受けやすい女性が、モーレツに働かないとキャリア・ポジション・収入を維持できないとか、子育てとの両立が難しい職場となると、人材の流出を招くことになります。

すると、再び採用活動をして、採用後も社内で教育など現場での労力がかかりますから、これは企業の体力を奪いかねません。

つまり、これからの成長企業は、「残業するな」などという「名ばかり働き方改革」や、「社員は会社の方針に合わせろ」というような会社ではなく、「会社の仕組みを社員に合わせる」柔軟性を持った会社になるのではないでしょうか。

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午堂 登紀雄(ごどう・ときお)
米国公認会計士

1971年岡山県生まれ。中央大学経済学部卒業後、会計事務所、コンビニエンスストアチェーンを経て、世界的な戦略系経営コンサルティングファームであるアーサー・D・リトルで経営コンサルタントとして活躍。IT・情報通信・流通業などの経営戦略立案および企業変革プロジェクトに従事。本業のかたわら不動産投資を開始、独立後に株式会社プレミアム・インベストメント&パートナーズ、株式会社エデュビジョンを設立し、不動産投資コンサルティング事業、ビジネスマッチング事業、教育事業などを手掛ける。現在は起業家、個人投資家、ビジネス書作家、講演家として活動している。著書に『33歳で資産3億円をつくった私の方法』(三笠書房)、『決定版 年収1億を稼ぐ人、年収300万で終わる人』(Gakken)、『「いい人」をやめれば人生はうまくいく』(日本実業出版社)、『お金の才能』『お金の壁の乗り越え方 50歳から人生を大逆転させる』(かんき出版)など。