女性を昇進から遠ざける「無意識の思い込み」

中央大学ビジネススクール教授・東京大学名誉教授 佐藤 博樹先生 撮影=小林久井(近藤スタジオ)
「男性管理職にも育成スキルを持った人を登用すべき」と佐藤先生

また、時短勤務が長くなると,残業が多い職場だととりわけ重要な仕事を任されにくくなるという弊害も出てくることになります。さらには、男性上司が「時短勤務だから出張は無理」「女性は管理職に向かない」と思い込んでいることもしばしば。上司に悪意はなくても、子育て中の女性には自己成長につながる仕事を割り振らないなど、本人の仕事意欲をそぐ結果になりがちです。

こうしたアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)も、女性を昇進から遠ざける要素の一つ。これを解決するには、男性管理職の意識改革と同時に、「部下を理解し育てるヒューマンスキルを持った人を管理職に登用すべき」と佐藤先生。

子育て中も無理なくフルタイムで働ける環境をつくる、男女別なく部下に育成機会を提供できる管理職を上司にする──。佐藤先生の言葉に、参加者は皆、新たな視点を得た様子でした。

質疑応答では多くの人事担当者からリアルな悩みが寄せられました

講演終了後は約1時間の質疑応答タイム。「管理職になりたくないという女性に意欲を持たせるには?」「女性管理職の数値目標はおくべきか」など多くの質問が投げかけられ、参加者にとって悩みや疑問を解消するよい機会になったようでした。

イベント終了後の懇親会は佐藤先生と参加者の交流の場に 撮影=小林久井(近藤スタジオ)
イベント終了後の懇親会は佐藤先生と参加者の交流の場に

続いての懇親会も、各自が佐藤先生の知見を得たり、参加者同士の交流を深めたりする場に。早くも次回を期待する声も上がっていました。

プレジデント ウーマン編集長・木下明子
【女性リーダーが特別でない、社会をつくる。】

日本のジェンダー・ギャップ指数は前年の110位から121位へとランクダウンしました。他の先進国では着実に男女格差が縮まっているのに、日本ではなぜ遅々として進まないのでしょうか。特に企業においては、女性管理職比率が低いままでは、やがて海外投資家にもそっぽを向かれてしまいます。

そこでプレジデント ウーマンでは、女性管理職の育成や、女性が自らリーダーを目指したいと思える環境づくりをお手伝いしたいと考え、「ダイバーシティ担当者の会」を発足させました。今後もセミナーイベントなどを通して、企業の人事・ダイバーシティ担当の皆様と一緒に、女性管理職を増やす手立てを真剣に考えていきたいと思います。

――プレジデント ウーマン編集長・木下明子

文=辻村洋子 撮影=小林久井(近藤スタジオ)

佐藤 博樹(さとう・ひろき)
中央大学ビジネススクール教授・東京大学名誉教授

1981年、一橋大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。法政大学経営学部教授,東京大学社会科学研究所教授などを経て、2014年10月より現職。