女性の7割が公共空間でハラスメントを経験

先日行われた#WeTooJapanの調査では、女性の7割が電車やバスなどの公共空間でハラスメントを経験し、通勤・通学時間が長い女性ほど、過去1年に痴漢被害を経験した人が多いという結果が出ています。多くの女性が卑劣な行為を経験したという状況は、明らかに異常です。

こういった被害を少しでも軽減したいと苦肉の策として生まれたのが女性専用車両で、いわば社会の歪みによって生じた存在です。決して女性の特権とか、男性差別ではないにもかかわらず勘違いをしている人もいます。

原因をさらにさかのぼれば、満員電車に乗るのが苦痛なのは男性も同様で、フレックスタイム制やテレワークなどがなかなか浸透しない硬直化した日本の企業体質であったり、東京一極集中という問題もあるでしょう。

メディアにとって女性専用車両は、「数字が取れるから」と安直に茶化して扱って良い問題ではありませんし、目を向けるべきはその背後にある本当の問題です。

問題の本質を見誤らせる「女の敵は女」

以前、筆者が寄稿した「マラソン開催地問題でなぜ札幌が批判されたか」でも書きましたが、構造上の問題を見過ごし、弱い立場が責められたり、弱い立場同士が争わされたりする事態はめずらしくありません。今回は偶然、女性専用車両が話題になりましたが、その根底にある「女の敵は女」という表現やものの見方は、根拠が無い上に問題の本質を見誤らせてしまいます。

実際に見聞きする「女同士のバトル」の例は枚挙にいとまがありません。育児休暇を取得しようとした際、独身や十分に休暇を取得できなかった世代の女性たちが責める、局の若い女性アナウンサーばかり優遇すると「お局」から批判される、昔から続く「夫の面倒は妻がみるべき」という価値観による嫁姑の間で生じる軋轢あつれきなど……。

これらは「女の敵は女」として描かれることがありますが、あくまで原因は男性主導の価値観の中で女性が働くという、その歪みの中から生まれるものです。

問題の根幹は、育児休暇を取得したことによって誰かに仕事の負担が偏りすぎる構造であったり、男性ウケするからと業務経験が浅いはずの若いアナウンサーに責任や露出を伴う業務を割り当てる構造、家事や育児が女性に押し付けられてきた構造から生まれる問題であって、「女の敵は女」と茶化してしまうと重要な問題を見失ってしまいます。

残念ながらこのような問題は解決に時間がかかりますが、メディアには数字だけにとらわれて不要な争いをあおる報道はしないでほしいと願うとともに、メディアに携わる者として大変心苦しいですが、視聴者の皆さんにも本当に大切なことは何かを見失わずにいていただけたらと思います。

写真=iStock.com 編集協力=シェアーズカフェオンライン

宮田 愛子(みやた・あいこ)
フリーキャスター

1982年、北海道出身。2005年、札幌テレビ放送入社。アナウンス部、報道記者を経て2017年にフリーに。