他国に学ぶM字型を台形にする方法
では日本がクオータ制を導入したとして、その後例のM字型の谷を、どうやって台形にするのか? その辺は、実際に台形をつくっている国々が参考になります。
まず北欧諸国ですが、最初にクオータ制を導入したノルウェーでは、まず「国会議員と大臣の40%以上が女性」という政治環境をつくりました。そのうえで2002年には、世界で初めて「民間企業にも適用するクオータ制法案」を可決させ、「2008年までに取締役の女性比率を40%以上にしない大企業は上場廃止」という、なんとも過激な制度を始めました。
さらに育休の一定期間を父親に割り当てる「パパ・クオータ制」も導入し、その結果ノルウェーでは、女性の労働参加率とともに、出生率も大きく上がりました。これらはその後、デンマーク、スウェーデンと北欧諸国に拡大し、浸透していきます。
北欧以外でも、例えば女性国会議員比率33%のオランダでは、家事・育児を念頭に置いた「短時間正社員制度」があり、キャリアが途切れることなく働き続けられます。
この他、ドイツでは1994年より「男女同権の促進義務」が国家の義務として憲法に明記され、今日では国会議員と大臣の約30%が女性ですし、フランスでも1999年、同じく憲法が改正されて「男女平等参画促進」が明記され、今日では国会議員の26%が女性です。
これらからわかることは、クオータ制で環境整備が実現できれば、正規雇用の好条件のまま女性自らの手でキャリアアップを継続でき、同時に出産・育児のフォローを受けることができるのです。
ただし北欧型がめざすのは、あくまでも持続可能な社会づくりであり、経済発展をめざすなら、フレックスタイム制の柔軟活用やテレワーク(在宅勤務)、賃金面での成果主義の徹底など、もっと勤務形態を多様化するなど、別の形を考えなくてはなりません。
つまり日本は、北欧型を参考にしつつ、『PRESIDENT WOMAN プレミア』(2020年冬号)にも書きましたが、憲法に「国会議員の30%を女性に」と明記した結果、さまざまな職種で女性活躍が進み、高GDP成長率を記録しているルワンダ型の経済発展を最終的にめざすべきなのです。その方法は、まだまだこれから考えていくべき課題ですが、いずれにしても、まずはクオータ制が導入されてからの話。その実現をめざすことこそが、今の日本がやるべきことだと思います。
写真=iStock.com
「現代社会」「政治・経済」「倫理」を指導。3科目のすべての授業が「代ゼミサテライン(衛星放送授業)」として全国に配信。日常生活にまで落とし込んだ解説のおもしろさで人気。『経済学の名著50冊が1冊でざっと学べる』(KADOKAWA)など著書多数。