マタハラの動きを感じたらすべきこと3つ

まず、「これから子育てと仕事の両立は大変でしょう」などと、一見、女性を思いやったような言葉をかけられ、マタハラをされそうな動きを嗅ぎとったら、すべきことは3つあります。

まず、「辞めることは考えていません」「いまの職場で働き続けたいと思っています」など、申し出を拒絶する意思表示をするか、「持ち帰らせてください」といって、その場で返事をしないことです。

次に「降格する」「減給する」などといわれたらその理由をちゃんと聞き、できれば書面で回答してもらいましょう。そうすることで弁護士などの第三者が、その処分が適法か不適法かを検証できるようになります。

3つめに、降格や減給などの処分が、誰の判断によるものなのかを確認することが極めて重要です。なぜなら会社側の正式な判断として示されている場合もあるかもしれませんが、ただの上司個人の判断の場合もあるからです。もし会社側の正式な判断としてその処分をするのであれば、正当な事由が必要になりますから、「回答書」などの文書にまとめてもらうことが不可欠です。

もしかしたらその回答書には、「妊娠する前から彼女は勤務態度が悪かったから辞めてもらう」というような、身に覚えのないことが書いてあるかもしれません。だとしたらそれはマタハラをごまかすために取り繕った理由の可能性もあります。私の経験からいえば、弁護士がそこを突けば、大企業ほど簡単に譲歩してきます。

マタハラを予防できる妊娠報告の方法

これから妊娠するかもしれない女性がマタハラを防ぐために大事なのは、妊娠したなら妊娠したという事実を早めに告げ、働けない時期や期間の予想をあらかじめ会社に伝えておくことです。そうすることで、会社も欠員を埋める方法を考える時間ができる。「妊娠・出産はプライベートなことだから、ギリギリまで言いたくない」と思うかもしれません。しかし、だからこそなおさら、上司から尋ねるわけにはいかないことなのです。

いきなり妊娠を告げられた会社は、「妊娠5カ月ね。じゃああと2年くらいは働けないでしょう」などとざっくりとした判断を下すことがあります。そんなとき、「私は何月までは働けて、何月から復帰できると伝えてあります」と主張できれば、自分にとって有利になります。やはり何ごともそうですが、「言い出しにくいことほど早めに具体定に伝えておく」ようにすれば、悪い結果にはなりにくいものです。

構成=長山清子 写真=iStock.com

齋藤 健博(さいとう・たけひろ)
弁護士

2010年慶應義塾大学総合政策学部を経て15年慶應義塾大学法科大学院修了。同年司法試験合格。16年弁護士登録、虎ノ門法律経済事務所所属。18年慶應義塾大学法科大学院助教。2019年銀座さいとう法律事務所開設。離婚や不倫など男女問題に強い。