副業を認めない上司を説得するには?

「会社としては副業容認なのに、直属の上長が認めてくれない」。こんな悩みを抱えている方もいるかもしれません。

重要なのは、上司や関係するチームとどうコミュニケーションをとるか、だと思います。

現在勤めている会社での仕事、これから始めたい他社での副業・兼業、あるいは個人での事業、どちらも本気であるはずです。仕事とはそうでなければいけませんし、本気であるなら、何かを隠したり、意図的に伝えないようなことがあってはいけないでしょう。

その際、何を軸に伝えるか、という点においてはポイントがあると思います。それは、「give」、何を与えられるかです。自分が副業・兼業をして成長することで、会社にどんなメリットを与えられるのか、ということです。

副業・兼業の実践は、自己成長・自己伸長の機会であることは間違いないでしょう。けれどそこを強調しすぎるのは危険。利己的に聞こえてしまうからです。同じことを伝えるのでも、「私はこうなりたい」というwillを軸にするのか、「会社にこういうことを還元したい」というgiveを軸にするのかでは、まったく印象が異なります。

副業・兼業時代に強い人材の条件

さらに言えば、最も大事なのは「why」。なぜ副業・兼業をするのかです。これは上司への交渉に使うものではありませんが、副業・兼業をするにあたっては明確にしておくべきポイントです。

冒頭で多様な働き方を受け入れる準備が整っていない企業のことを述べましたが、個人の側からみると、なぜ副業をするのか、そのビジョンが明確でないケースも散見されます。つまり、かつては副業・兼業と言えば、お小遣い稼ぎ、生活費に困っている人がするもの、といったイメージが強かった。そうした捉え方ではなくなった今、では副業・兼業をして何をかなえるか? わかりやすい指標である報酬一つとってみても、ではどのくらいを目標値とするのか? 自分の人生と重ね合わせて答えられる人は、まだ少ないのではないでしょうか。

これがなければ、本業と副業の両立は長続きしません。

“FIND YOUR WHY”。これからますますこれが大事な時代になってきます。自分の「why」を持っている人は、副業・兼業・個人で働くマーケットでも強い。なぜやるかが明確な人は、パートナーシップも組みやすいものです。外の世界でも同じ方向を見る仲間を増やし、ビジョンを実現していくことができるでしょう。

さて、「give」を軸に話をしようとしても、聞く耳すら持ってくれない、という上司ならば? それはもうその上司、あるいは会社が脆弱です。会社の体制を変えるように求めていくか、あるいは見切りをつけてもいいかもしれません。

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久保田 雅俊(くぼた・まさとし)
サーキュレーション代表取締役

1982年生まれ、静岡県出身。新しい働き方を追い求め、学生起業、家業の清算、会社員としての管理職、パラレルワーク、社内起業を経験する。学生時代に複数の事業を立案し学生起業家となり、パラレルワークを実現。21歳のときに、地元の進学塾を経営していた父親が意識不明となり、10年間に渡って、父親の介護を余儀なくされる。父親が経営していた企業は継続不可能となり、自身の手で会社の清算をすることとなる。その経験から企業経営には「金」以上に「人の経験・知見」が必要であるという考えにたどり着いた。2014年株式会社サーキュレーションを設立。プロフェッショナル人材の経験とスキルを複数社で活かすプラットフォーム(プロシェアリング)を運営している。2020年現在、経営プロフェッショナルのネットワークは1万3000人、導入企業は1500社を超える。