介護の方向性を決める5つのステップ

「厄介ごと」扱いされやすい介護は、身内の中で気の弱い人に押し付けられがちですが、「自分が犠牲になればいい」と諦めるのは間違いです。「介護はひとりで出来るものじゃない」という大前提のもと、分担を決めていくという考え方で話し合いましょう。

家族みんなで支えるのが介護です。

「でも、何から始めたらいいのかわからない」という方のために、介護の方向性を決める5つのステップをご紹介します。

ステップ①「親の心身の状態」を把握する

要介護度、障害の程度などを把握して、在宅での生活に耐えられるかどうかが第一のポイント! 親がどこまでなら自力で出来るかを知ることが重要です。無理をするのは、要介護者にとっても家族にとってもマイナスです。

ステップ②「誰が介護するのか」を決める

親が自分の力だけで在宅で暮らせないのであれば、「誰が、何を、どの程度まで」支えていけるのかを考えましょう。そして、ひとりの人にすべての責任を押し付けないこと。

一般的に10年を超えることが珍しくない介護期間を乗り切るのは、皆が負担を分け合う態勢を作ることが重要です。

●きょうだいがいる場合

きょうだいそれぞれの状況を考慮しつつ、「誰が、何を、どの程度まで」できるのかを書き出していきましょう。その際、「長男だから親の面倒を見て当たり前」「長男の妻だから夫の親の面倒を見て当たり前」「大学まで行かせてもらったから」「子育てを手伝ってもらったから」とひとりに押し付けず、フラットな立場で考えるのがポイントです。

●ひとりっ子の場合

ひとりっ子の「全部ひとりで背負わなければ」というプレッシャーはきょうだいがいる方の比ではありません。まず介護はひとりでは無理というのを前提にして、親のきょうだい、その子どもたち(いとこ)など親族で分担出来るか話してみましょう。

そのとき、自分自身はリスクを背負わないのに、口だけ出してくるような親戚の意見は無視すること。無責任な意見に振り回されなくて大丈夫です。

ステップ③「さまざまな支援態勢」を把握する

介護保険や地域の社会資源にどんなものがあり、どう使っていけばいいかを知っていきましょう。長丁場になる介護を家族だけで支えていくことは現実的に極めて困難。自分の生活を守るために、公の制度を使いましょう。

まずは、どの地域にも一つはある「地域包括支援センター」へ相談を。地域における介護の情報がそろい、さまざまな介護制度の手続きが出来ます。

会社勤めの方は会社に聞いてみるのもお忘れなく。「介護休暇」や「介護休業」など介護を助ける制度が整っている会社はそれぞれの制度で65%以上と意外に多いのですが、知っている人は従業員の5%ほどなのです。まずは制度の存在を知ることが大切ですね。

ステップ④「いくらぐらいなら支払えるか」を考える

長期間におよぶことが多い介護を乗り切るために、どのサービスが、いくらかかるのかを調べましょう。親の年金や預貯金がどれくらいあるのかを知ったうえで、自分やきょうだいがどれくらいなら支払えるのか検討しておきます。

ステップ⑤「親がどこで暮らしたがっているか」を考慮

例えば親が「仕事を辞めて一緒に暮らして欲しい」と言ってきた場合。親の気持ちに寄り添おうとするあまり、我慢を強いられるような状態は長続きしません。

「仕事はやめられないけど、一緒に暮らせるよ」と同居または近くに呼び寄せるなど、親の希望を考慮したうえで落としどころを見つけていきます。

介護というと、実際に世話している「肉体労働」の部分だけが浮き彫りにされがちですが、それが介護の全てではありません。親やきょうだいの気持ちを知ること、会社や公の制度を調べること、分業を話し合うこと。肉体労働に至るまでの全てを含んで「介護」です。

介護の意味するところを広げ、ひとりの人が背負って苦しまないように、活用しながら家族全員、会社、地域全体で介護をとらえてみてください。