来年度以降はもっと心配なことが起きる可能性

今、自治体の保育担当部署は、認可外保育施設の利用者の「保育の必要性の認定」業務など、無償化のために新たに発生した事務に奔走しています。

認可保育園等では、無償化と引き換えに保護者負担となった食材料費の集金業務で職員が多忙になっています。

幼稚園や認可外保育施設で「便乗値上げ」が相次ぎ、「値上げした分をどう使うのか、聞いても説明がない」など、納得できない保護者からの相談も保育園を考える親の会に届いています。

一番心配なのは、国や自治体の今後の保育施策です。「幼児教育無償化」の費用は、来年度から都道府県や市町村も負担することになっています。

新潟県では県の財政危機を理由に、独自に手厚くしていた保育士の配置基準を下げることを検討しています。新潟県では、国の基準では6対1(6人の子どもに1人の保育士)になっている保育士配置を、県独自の補助金を出して3対1に改善してきました。この補助金をなくしてしまうと、これまでのように子どもにていねいにかかわる保育ができず安全も損なわれると地元の保育園関係者は反対しています。

100都市保育力充実度チェック」によれば、調査対象100市区のうち、1歳児の保育士配置を5対1〜3対1に改善している自治体は約8割に上ります。国の基準が低すぎて自治体が改善せざるをえない状況なのです。

市川市は、公立保育園を全園民営化する計画を発表し、その理由のひとつに「幼児教育無償化」によるコスト増を挙げています。公立保育園の無償化費用は10割が基礎自治体の負担となるためです。

お金を出して子供のための環境を支える

自治体の財政状況にかかわらず、保育の質を保障するためには、国による底上げが必要です。

もしも、毎月3万円払えば、信頼できる保育士によるていねいな保育と、美味しい給食と、子どもの散歩や水遊びが確保できると言われたら、払うという人は多いでしょう。

従来制度のように所得に応じた負担にすれば、経済的に苦しい家庭の子どもも守られます。

みんなでお金を出し合って子どものための環境を支えるほうがいいのではないか、と私は思うのですが、どう思いますか。

写真=iStock.com

普光院 亜紀(ふこういん・あき)
保育園を考える親の会顧問(アドバイザー)

1956年、兵庫県生まれ。早稲田大学第一文学部卒。出版社勤務を経て保育ジャーナリストに。著書に『共働き子育て入門』(集英社新書)、『後悔しない保育園・こども園の選び方』(ひとなる書房)などがある。