年明け早々に、岸田文雄首相が「異次元の少子化対策」を行うと表明。先月下旬に始まった国会では、児童手当などの少子化対策が議論の焦点の一つになっている。ジャーナリストの大門小百合さんは「ハンガリーは、GDPの5~6%を少子化対策に充て、ローンの返済免除や所得税免除などの大胆な施策を実施。約10年かけて、人口減少に歯止めをかけた。日本も“異次元”と言うからには、これくらい大胆な施策を行うべきではないか」という――。
病院の廊下に並ぶポータブルベッドに入った新生児たち
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議論すべきはそこなのか?

岸田文雄首相が「異次元の少子化対策」を打ち出してから、国会では少子化対策の議論が活発だ。

それは歓迎すべきことなのだが、各党の政策議論が、所得制限の撤廃や児童手当の拡充、「産休・育休中のリスキリング(学び直し)支援」などに集中していて、「議論すべきはそこだけじゃない!」と感じている人は多いのではないだろうか。

私も子育て経験者だ。わが家はすでに、子育ての一番大変な時期は通り越したが、思い返してみると娘が生まれたばかりの頃は、2時間おきの授乳で超睡眠不足。娘の睡眠リズムが乱れて夜になっても寝てくれない日が何日も続いた時は、私も連日1~2時間しか眠れず、ついに全身にじんましんが出た。顔まで腫れて、精神的にも不安定になった。

仕事に復帰してからは、子どもが熱を出すたびに病児保育施設を必死に探し、仕事を休めないときは、昼間のシフトを代わってもらって娘の世話をし、夕方に夫とバトンタッチして出勤して夜勤をこなしたこともある。すでに責任ある仕事を任されていた身としては、仕事を続けるために精神的、肉体的な限界までやり続けるしかなかったのだ。

それでも私は、夫の助けもありなんとか乗りきれたが、あの時、「私が見ていてあげるから、少しゆっくりしなさい」と言ってくれるベテランベビーシッターさんや、頻繁に家を訪問してくれる保健師さんがいたら、どんなに楽だったろうかと思う。

子どもが学校に行き始めると、教育にもお金がかかる。塾代や習い事など、子どもが1人でも大変なのに、2人、3人といればその分だけお金が出ていく。ローンが半分になるわけでもなく、学費が免除になるわけでもなく、月に5000円や1万円の児童手当をもらったところで、それだけで子どもを産もうと思う若い人たちがどれだけ出てくるのだろうか。

「異次元の少子化対策」というなら、もっと当事者の声に耳を傾け、大胆で意味のある支援策を出すべきだと思う。

フランスや北欧の子育て支援策はよく話題になるが、「大胆な少子化対策」で最近注目されているのがハンガリーだ。調べてみるとまさに「異次元」と言えるにふさわしい、ユニークな政策を実施していた。