お金よりも「保育」がほしいという声

実は、この「幼児教育無償化」、実施前からさまざまな議論がありました。

今回の「無償化」の実施は従来の制度で保育料が高かった家庭、つまり所得の高い層ほど恩恵を受けることになります。施策としての有効性に疑問符がつく中で、子育て当事者の間では「保育園に入れなくて困っている家庭がこんなに多いのだから、待機児童対策のほうが優先されるべきではないか」「保育ニーズがふえて、かえって待機児童問題が深刻化するのではないか」などの声が広がりました。

2019年4月の国の待機児童数は16,772人となり、2年連続で減少したと発表されています。ところが、認可の保育(認可保育園、認定こども園、小規模保育など)に申し込んで認可を利用できていない子どもの数を単純計算すると、2019年度は2018年度よりも増えていました。認可外保育施設で待機している家庭、遠くの施設を勧められて断った家庭など待機児童数から除外されている数字を含めると、認可に申し込んで認可を利用できていない子どもの数は全国で10万人に上ります。全体としては少子化傾向にあるので、どこかで保育のニーズ増は頭打ちになるはずですが、「保活」が厳しい状況はまだ続いています。

無償化の財源が足りない?!

「幼児教育無償化」の財源は、年間で7800億円程度と言われています。

消費税を上げて得られた貴重な財源の使い道が「幼児教育無償化」であると告げられて、「え、そこですか?」と思った当事者も少なくなかったと思います。

そんな折も折、11月20日に「幼児教育無償化の予算が400億円不足するかも!」という報道が流れました。足りなくなった理由は、幼稚園よりも無償化の単価が高い保育のほうに利用者が流れているためと推定されています。国はまだ精査中ということですが、これから保育園をめざす人たちの不安は膨らみます。