成長を続ける3つの秘密

週休3日制を維持するために、同社の働き方の工夫のポイントは3つある。

まず1つ目が、優先順位を明確にすることだ。同社は目標管理制度としてOKR(Objectives and Key Results)を採用している。OKRは、目標と目標達成のための主要な成果を明確にして評価をするのが特徴だ。

入口には営業日と定休日を明記。

「今やっている作業でも、仕事の優先順位がわかればその作業をやめ、すぐに新しいものに取り掛かれる。気持ちとしては、今までやってきた作業を続けたくなりますが、600のスタッフはみんな、その切り替えがうまいですね」

2つ目が、意思決定のプロセスが明確であることだ。あらゆることに対して、「意思決定者」と「承認者」を決めるようにしたのである。

たとえば、何らかの制度があったとして、誰が作ったものなのか明示している。こうすることで、変更を提案したいときも誰に提案して誰の承認を得ればいいかがはっきりする。改善や変化への対応もスピード感をもって進められるというわけだ。

3つ目が、EX(Employee Experience)、つまり、働くことを通じて従業員が得られる体験を重視することだ。アンケートスコアを用いた「働きやすさの最大化」や、OKRの達成や変化する局面での「成果の最大化」を評価する制度も設計中だという。

こうした取り組みが、短時間で高いパフォーマンスを発揮できる環境を作り上げているのである。

仕事も家庭もあきらめない

妻の妊娠・子育てを機に、効率的に最大限の力を出せるよう、少しずつ会社や制度を整えてきた久保さん。子育て期が終わったら、またバリバリ働くような環境に戻りたいか? と問うと、帰ってきた返事はこうだった。

「週休3日制にはこだわってはいません。ですが、夫婦の関係、家族の関係は私の人生の大切な一部。たとえ子育てが一息ついても、子供は変わらず存在し、関係はつながっています。これからも、大切にしたいことの一つ一つをあきらめず、自分の時間や熱量を注ぎ込むことには変わりはありません」

連綿と続く家族の関係と同じように、久保さんが仕事にかける情熱も続いていく。どちらもあきらめないといういい意味での「欲張りさ」が、新しい働き方を生み出していくのだ。

文=藍羽笑生

久保 渓(くぼ・けい)
600 代表取締役

1985年、長崎市生まれ。高校卒業後、米国Carleton Collegeを政治科学とコンピューター科学のダブルメジャーで卒業。2010年サンフランシスコでfluxflex, inc.(フラックスフレックス)を創業。12年帰国。13年ウェブペイを創業。クレジットカード決済サービス「WebPay」をリリース。15年にLINEの傘下となり、LINE Payの立ち上げに参画。17年5月、LINE Payが国内3000万ユーザーを突破したのを区切りとして退職。同年6月に600を創業。無人コンビニ「600」を提供している。