シワだけじゃない。レチノールは角膜修復にも有効
涙は、油層・水層・ムチン層の3層構造になっており、角膜に接しているのが目に水分を留めるムチン層、それを覆うのが水層、一番外側が涙の蒸発を防ぐ油層となっている。角膜修復の治療では、涙の成分を補い、角膜上皮の傷の治癒を促進させる点眼薬を使った治療が標準的だ。
「眼科での治療薬は保湿効果のあるヒアルロン酸点眼液のほか、ムチンなどの涙液成分不足にはジクアホソルナトリウム点眼液、レバミピド点眼薬を処方します。眼科に行く前のケアとしては、市販の目薬も有効です」(順天堂大学医学部附属静岡病院 眼科 先任准教授 土至田宏先生)
角膜上皮細胞の成長と修復を促す成分として近年注目されているのがビタミンA(レチノール)だ。シワを改善する成分として皮膚科分野ではおなじみの成分だが、傷ついた角膜上皮細胞を修復する効果があることで注目されている。第3類医薬品でもビタミンA配合の点眼薬があるので活用してもいいだろう。角膜上皮は目を閉じているときに修復するので、寝る前に差すといい。
目に異変を感じたら早めに受診することが大切だが、角膜上皮障害予備軍ともいえる、ドライアイにならないよう日頃から目をいたわることも習慣づけたい。
角膜ケアのためにできるセルフケア
VDT作業を極力減らす
仕事の休憩時間にはスマホを触らずに目を休める。PC画面と目の距離は40cm以上離し、視線がやや下向きになるよう高さを調整する。集中するとまばたきが減るので意識的にまばたきをしよう。上を向くと涙液が蒸発されやすいので、仰向けでスマホを見るのは避ける。
目を温める
人工涙液を点眼しても目が乾いてしまう場合は、油層の働きが低下している可能性がある。油分を出す器官であるまぶたのキワにあるマイボーム腺が詰まると油分が出にくい。目元を温めて分泌を促進させよう。
点眼薬を使う
ドライアイを放置すると角膜上皮障害に進行することも。市販のビタミンA配合の点眼薬などを取り入れて角膜をケアしよう。
コンタクトレンズは正しく使う
特にカラーコンタクトを医師の診察なく購入するケースが危険。装用時間も守ること。痛みを感じたときにはコンタクトレンズの使用は中止してメガネを使用する。
外気にさらされている角膜は、冬本番に向けて肌と同様に乾燥しやすくなる。肌の保湿をするように、角膜もいたわりたいものだ。
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ヘルス&ビューティ系の記事を中心に、Web、雑誌、単行本などの執筆を手掛ける。