自分の体の癖や疲れやすいところはどこなのか。整体師の片山洋次郎さんは「人は普段から本能的に、自身の体癖に合ったしぐさやリラックスの仕方をしている。なかでも寝相には、その人の体癖が素直に表れる」という――。(第3回/全3回)

※本稿は、片山洋次郎『姿勢をゆるめる 疲れない身体と心の整え方』(河出書房新社)の一部を再編集したものです。 

腕で目を覆ってベッドで眠ろうとする女性
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姿勢バランスの「癖」が個性の素になる

身体の動き方や姿勢バランスの取り方、疲れ方、心の動きなどのパターンは、人それぞれ違います。姿勢の要となる腰や骨盤の動きの「癖」を10のパターンに整理して、姿勢バランスの取り方の偏りから人それぞれの感受性や嗜癖をつかむ考え方が「体癖」です(整体界の手塚治虫とも言うべき野口晴哉がまとめた「体癖」が基礎になっています)。

体癖の違いによって、普段何げなくやっているしぐさや癖も、気持ちいいと感じる姿勢や場所・環境も変わってきます。自分の体癖に合った生活の仕方や身体の調整法を知ることが重要なのです。

といっても、体癖を特定するのは難しいですし、一人の人に複数のタイプが混じっているのがふつうなので、人それぞれの体癖を「鑑定」するのは、専門家でも簡単とは言えません。観る側の体癖的感性によっても違って見えるからです。

数値化できるような客観的指標というよりは、人それぞれの身体から率直に生まれる嗜好や感受性が体癖ですから、生活や人生経験の中で繰り返し現れるパターンに気づければ、それが自分の体癖だと言っていいでしょう。

しかし人の身体はよくできていて、普段から本能的に、自身の体癖に合ったしぐさやリラックスの仕方をしているものです。そうやって、無意識のうちに自分で自分の身体を微調整しながら、緊張を解こうとしているのです。

体癖は寝相に表れる

なかでも寝相には、その人の体癖が素直に表れるので、寝相からひもとくと体癖がある程度は推測できます。

寝相とは、睡眠時にその人がもっとも呼吸が深くなりやすい体勢、つまり、もっとも楽な姿勢です。意識を失っている睡眠中は、脳による強制労働から身体が解放され、寝相そのものが最高のボディワークとして機能しているのです。寝相には、姿勢の疲れの回復を促す機能があります。

日中の活動で疲れがたまると、姿勢の一部がこわばってきます。睡眠中に、こわばった部分がゆるみやすい体勢をとって、深い呼吸に導くための特定の寝相になるのです。その深まった呼吸で、さらにこわばりをほぐして、疲れを能動的に回復しようとするわけです。

言い換えると、疲れて硬くなっているところをゆるめ、呼吸が深くなりやすい体勢が寝相と呼ばれているわけです。それは、人が本能的にとっている休息体勢と言えるでしょう。

整体の現場でも、身体の一部のこわばりがほぐれて固まっていたところがゆるむと、呼吸が深まる手応えがあります。睡眠中にも、それと同じことが起きているわけです。