男性との違いを強みに挑戦を続けて
キャリアアップしていく中では、人材育成も重要なスキルになります。私の場合は、キャリアの途中で迷っている人には、身の丈より少し上の成功体験を仕掛けるようにしました。また、「私の仕事はここまでだから」と割り切っているタイプには、得意分野での目標ややりがいを見出せるよう努めました。
一番困るのはやる気が見えない人で、これには特効薬はありません(笑)。ただ、そこで退場を言い渡すようでは管理職失格ですから、単にやる気がないのか、今の職に適性がないのかを慎重に見極めた上で、気づきのチャンスを繰り返し与えるのがいいでしょう。私は、人材育成には時には厳しい指導も必要だと考えています。ただし、それには信頼関係や愛情、第三者のフォローが必須。この土台を忘れずに、部下のことを考えた育成をお願いしたいと思います。
もう一つ、長く働き続けるためにはワークライフバランスも大切です。特に子どもが小さいうちは、両立に悩む人も多いでしょう。私は「お金で解決できることはお金で」と考えて、ベビーシッターやお手伝いさんを積極的に頼みました。周囲のサポートにも甘えつつ、帰宅前15分のコーヒータイムをつくるなどして一人の時間も確保するようにしました。
おかげであまりストレスがたまらずに済んだので、皆さんにもおすすめしたいですね。両立は、職場や家族のサポートなくしては立ち行きません。「甘えた後は感謝の気持ちを忘れない」を鉄則として、自分の子育てが楽になったら、次はぜひ他の人をサポートしてあげてください。
長いキャリアの中では失敗もあるでしょう。でも私は、やり直しがきくものは「失敗」ではなく「後悔」だと思っています。つまり、仕事はあきらめないことが一番重要なのではないでしょうか。苦しい時はつい近視眼になって、もうダメだと思ってしまいがち。私はメンターに相談したり、自分で自分をほめたり、実現したいことを書き出したノートを見て「意外と達成してるな」と実感したりしながら乗り越えてきました。
女性の活躍は私の願いでもあります。私は総合職になってから、男性以上にがんばって認めてもらおうとがむしゃらに働いてきました。それもいい経験でしたが、今思うと「男性との違い」を「引け目」と感じていたからです。私が期待されていることは男性と遜色ない働きをすることだと、勘違いしていました。私たちに求められているのは、違いを生かすことです。違いを強みと捉え、仕事を楽しみながらしなやかに自分らしくチャンスがあれば尻込みせず挑戦してください。その姿勢を見せ続けることが、次世代の育成につながるのだと思います。
文=辻村洋子
1979年、安田火災海上保険に一般職として入社、95年、総合職に転換し、医療保険分野で課長・部長を歴任、2013年から執行役員、17年にはSOMPO企業保険金サポート代表取締役社長就任、19年より現職。