女性リーダーに必要なスキル~管理職編&役員編

課長になったのは49歳の時。お世話になった先輩が部下になり、やりにくさも感じましたが、「マネージャーというのは上下関係ではなく役割としてやらせていただきます」と伝えたことで、良好な関係を築くことができました。第三の転機が訪れたのはその翌年、新組織立ち上げの仕事を通してです。

これは私の全キャリアを通じて一番の大仕事でした。9人の立ち上げメンバーとともにがむしゃらに働き、約1年半後には180人の大組織に成長させることができたのです。休みはほとんどありませんでしたが、つらさはまったく感じず、むしろ幸せな時間でした。いい仲間に恵まれ、自分がしたい仕事とできる仕事が一致して、仕事の面白さをより深く体感できたのです。

この成果が評価されて部長に昇格し、以降は理事、執行役員、グループ会社の社長と、それぞれの段階で必要とされるスキルを身に付けるよう努力してきました。こうしたキャリアの中で、私が心がけてきたことをお伝えしたいと思います。

まず、男性社会における女性管理職としては、①向かい風に立ち向かう覚悟を持つ、②鈍感力を磨き批判もエールと捉える、③情報やサポーターを得るための人脈づくり、④組織に欠かせないオンリーワンの存在になる、⑤自分の売りを自ら発信するプロモート力をつける、の5つを心がけました。

そして何よりも大事にしたのは、チャンスが舞い降りてきたら必ず自分でつかむこと。異動でも昇格でもプロジェクトでも、力を発揮するためにはまず打席に立たなければなりません。皆さんも、もし目の前に階段が現れたら、ぜひ勇気を持って登ってください。

次に、各ポジションでは、その役割にふさわしいスキルを身につけようと心がけていました。課長では業務知識や単年ごとの成果、メンバーとの信頼関係構築、部長では伝える力やビジョンづくり、決断力、ポジティブに方向性を示す力、任せる力などを磨くよう努力しました。

役員で努力したことは部長時代に求められるスキルより、ビジョンづくりや決断の際に見据える範囲が大きく広がりました。時間で言えば、10~20年先を見る目が必要になったのです。困難にも前向きに対峙する姿勢や多様性を受け入れる度量、また忖度を見抜く力も求められていると感じました。私がこうしたことに気づいたのは、各ポジションに昇格してからでしたが、皆さんには今から意識しておいていただけるといいかなと思います。