エンディングノートを書いてもらうには

自分の健康と、子どもに迷惑をかけたくないということは、親が最も気にしている点なので、このように自分と同年齢の人が健康を害して子どもが大変な目にあったと言えば、「ウチもそうなったら困る」と感じてくれるはずです。

もうひとつおすすめなのが、エンディングノートを書いてもらうことです。エンディングノートとは、万が一の時に備え、我が家の家系図や自分史、家族への伝言、所有財産の一覧などを書き留めておくノートです。根掘り葉掘りお金について聞くよりも、自発的に書いてもらう方がよほど楽ですし、親にとっても、悔いのない人生の締めくくりに役立つかもしれません。

なかには「縁起でもない!」と怒る親もいるでしょう。その場合は「誰だっていつかは死ぬんだよ。その時に自分が思うような葬儀になった方がいいでしょう。だから、希望を書いておいてほしいんだよ」と言えば、渋々でも受け入れてもらえるのではないでしょうか。

大学ノートや手帳に書いている人もいるようですが、それだと漏れてしまうことがあるので、専用のエンディングノートに書く方がいいようです。ちなみに、大きな書店や文具店へ行けば1000~1500円で販売されています。

親の資産状況をつかむコツ

前項で「お金の話の上手な聞き出し方」を紹介しましたが、読んでいてなんとなく不愉快になった人も多いと思います。その理由はおそらく「実の子なのだから、信用してくれて当たり前じゃないか。泥棒のような扱いをしないでほしい」と感じたからでしょう。

でもそれは、子ども側の勝手な思い込みにすぎません。納得してもらうには「段取り」が必要です。

段取りはまず、日常生活のおしゃべりの中で、経済状況につながるような事柄に触れることから始めてはどうでしょうか。

たとえば、「消費税も物価も上がって物入りだよね」「ずいぶんたくさん薬の袋があるようだけど、薬代もバカにならないでしょう?」「たまには旅行でも行ったらどうなの?」「このエアコン、もう10年くらい使っているんじゃないの。最新モデルは電気代の節約になる、買い換えたら?」のように、お金の話題を世間話として持ち出してみるのです。

人は、関心のある話に敏感に反応するものです。そのため、もし資産状況が悪化している場合は、「旅行か。そりゃ行きたいけど、余裕がないから難しいな」などと返事が返ってくるはずです。ここから、お金の話へ自然とつなげていけばいいでしょう。

冷蔵庫からもわかることがある

話に乗ってこない場合は、「氷、ある?」「麦茶が飲みたいな」などと言って、冷蔵庫や冷凍庫を開け、買いだめしてある食材の量や種類などが以前と変化していないかどうかを確認してみましょう。ガランとしていたり、「○○円引き」というシールが貼ってある食材ばかり目立ったら、家計が苦しいのかもしれません。ただし、高齢になると食が細りますし、「好きで倹約している」という人もいるので、これだけで判断するのは尚早ですが、最近の経済状態や健康状態を知るヒントになることはたしかです。

また、家をバリアフリーにリフォームをしたいと考えているシニアは多いため、これを「話の入り口」にする方法もあります。「久しぶりに見たら、お風呂場の段差がけっこうあるね。歳をとると小さな段差でも転ぶことがあるそうだから、バリアフリーにリフォームした方がいいんじゃない?」といった感じです。

すると、「実はもう工務店に予約してあるんだ」とか「やりたいのは山々なんだが、けっこう金額がかかるらしいんだ」のような返事が返ってくるはずです。ここからもお金の話に発展できる可能性があります。

このように、さり気ない話題から親の気持ちをお金の問題に向けさせ、親の方から「今、これだけの蓄えがあるから、大丈夫だよ」とか「そろそろ資産を整理して、お前にも把握しておいてもらうべきかな」と口にしてもらえればベストでしょう。

ただし、たとえお金の話になったとしても、子どもの方から「資産」や「相続」という単語は使わないこと。これらの単語はシニアには生々しい印象を与えるため、急に口をつぐまれる可能性があります。話の「段取り」は作っても、それ以降は「受け身」に徹することが、親からお金の話を上手に聞き出す秘訣です。