親の経済状況は知っておいたほうがいい

いずれにしても、親が経済的に困っているのを知ったら、子どもとしては放っておくわけにはいきません。しかし前出のように、突然、第三者から知らされた場合にはいろいろな意味でうまく対応できないでしょう。

日本人の平均寿命は男女ともに80歳を超えているため、そんな「もしも」のときには子ども世代がすでに年金生活に入っていることも考えられます。そうなると、予想外の出費で自分たちの老後の生活設計に影響を受けることもあるでしょうし、その結果、夫婦間に亀裂が生じることもあるでしょう。兄弟姉妹がいるなら「父さん(母さん)がここまで追いつめられる前に、なぜ気がつかなかったんだ」という言い争いに発展するかもしれません。

このようなトラブルを防ぐためにも、親の経済状況はきちんと知っておいた方がいいわけです。親の蓄えや保険・年金で老後の生活がすべてまかなえるとわかれば、それで安心できますし、足りないようであれば、早い時期から少しずつ対応していけば大きな負担にならないはずです。

なかには「自分の生活だけで精一杯。親には申し訳ないが、面倒をみる余裕はない」という人もいるはずです。こんなときは事情を説明して、生活保護の申請を進めてもらうという方法もあります。

お金の話の上手な聞き出し方

「先生がすすめていたので、帰省した際に『ねぇ、保険証や預金通帳、家の権利書なんかはどこにしまってるの?』と父親に聞いたんです。そうしたら、急に機嫌が悪くなって『その歳になっても、お前は親のすねをかじろうとしているのか!』と怒鳴られてしまいました。やっぱり、親とお金の話をするのは難しいですね」

後輩に、こんなことを言われてしまいました。いやはや申し訳ない話です。「親の経済状況は知っておくべき」と話しておきながら、こんなことを言うのは恐縮なのですが、こうした反応が返ってくるのはよく聞く話です。

おそらく誰でも、久しぶりに訪ねてきた子どもにいきなり「通帳や権利書はどこにあるの?」と聞かれたら、「私たちの懐をあてにしているのか!」と感じるでしょうし、「歳をとったから、お金の管理ができないと思われているのかもしれない」という被害妄想を感じるかもしれません。

これは、普段から親子間でお金の話をしていないために起きる拒絶反応です。このような拒絶反応を回避するには、ちょっとした会話テクニックが必要です。

たとえば、身近で起きたことを例にあげるのもいいでしょう。

「同僚のお父さんがひとり暮らしをしていたんだけど、急に倒れて病院に運び込まれたんだ。その時に、保険証や通帳の置き場所がわからず、入院の手続きや支払いにすごく困ったんだって。オヤジはまだまだ心配ないだろうけど、そうなったときにオレが困らないよう、保険証や通帳の置き場所を教えておいてもらえないかな」

といった感じです。