将来の介護や相続を考えると、親の経済状況を把握しておくことは必須。けれども親に「お金の話」を切り出しにくいと感じる人も多いのではないでしょうか。精神科医の保坂隆さんが、さりげない日常会話の中からお金の話を引き出す方法を教えてくれます。

※本稿は保坂隆『精神科医が教える 親のトリセツ』(中公新書ラクレ)の一部を再編集しました。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/JGalione)

子に相談せず生活保護を申請する母

「ある日、役所から電話がありました。用件は、私の母親が生活保護を申請しているのだが、そちらで面倒を見られないだろうか、というものでした。私は大学卒業後、実家からかなり離れたところで仕事に就いていたため、ほとんど帰省することがありませんでした。でも、母から経済的援助を申し込まれたことがなかったので、『自分でなんとかやっているはず』と思い込んでいたんです。だから、まさに寝耳に水でしたし、恥ずかしくなりました」

日本ではお金を不浄なものとする考え方が強く、親しくなればなるほど、お金の話題を避けるようになりがちです。親子というのは、その最たるものかもしれません。それで、このような事が起きてしまうのです。

そもそも、親というのは経済的に困っていても、「子どもにだけは迷惑をかけたくない」「子どもに頼るほど落ちぶれていない」と考えて、黙っているケースが少なくありません。

しかも、このような困窮は、蓄えや年金を含む収入が足りていない場合だけに起きる問題ではありません。親が親族などの連帯保証人になって多額の借金を背負わされるというトラブルも多いと聞きますし、最近は、振り込め詐欺に代表される特殊詐欺に大切な預貯金を奪われることもあります。そしてその結果、土地家屋まで失い、知らぬ間にアパート住まいになっていたというケースもあるようです。