※本稿は保坂隆『精神科医が教える親のトリセツ』(中公新書ラクレ)の一部を再編集しました。
モノがあふれるシニアの家
ニュースやワイドショーなどで「ゴミ屋敷」が話題に上るようになったのは、十数年ほど前のことでしょうか。室内だけではなく、玄関の外にまで、ときには道路にまでゴミの入った袋や家電製品、段ボールなどがあふれているすさまじい光景を、誰でも一度くらいは目にしたことがあるはずです。
テレビ関係者に聞いたところ、ゴミ屋敷の住人に話を聞いたり、片づける様子をドキュメンタリー風にした番組はけっこう視聴率がとれるそうです。それはおそらく「他人事」だからだと思います。まさか、自分の実家があんな状態になっているとは誰も思いませんから……。
しかし、ゴミ屋敷とまではいかないものの、シニアの家の中にモノがあふれているのは決して珍しいことではありません。私の知人も、久しぶりに実家へ帰ってドアを開けたとたんに、「うそでしょ、泥棒にでも入られたの!」と叫んでしまったそうです。なぜなら、玄関も廊下も階段も、足の踏み場がないほどさまざまなモノが置かれていたからです。