そもそも、なぜ家が散らかるのか

問題の解決には、原因をしっかり理解することがとても大切です。それは、実家を片づける際にも言えるでしょう。ではなぜ、シニアの家は散らかってしまうのでしょうか。

当たり前のようですが、それは持っているモノが多すぎるために起きるのです。私は若い頃にアメリカの大学へ留学していましたが、そのときを思い返してみると、アメリカの人たちに比べると、日本人はとても多くのモノを持っていると思います。アメリカだけではなく、どの国と比べても負けないのではないでしょうか。

たとえばカトラリーにしても、スプーンにフォークにナイフ(それも、各種の大きさ)など洋食向けから、中華料理向けのれんげ、そして毎日使うお箸があります。器も和洋中の3種類を備えている家がほとんどだと思います。もしこれを、日本料理向けの物だけにしたら、キッチンのモノはずいぶんと減るはずです。

また、日本人は「○○専用」というモノが大好きなのも原因となっています。たとえば、ハサミ。どこの家にもキッチン用、布を断つ手芸用、工作用、子ども用、散髪用、まゆげ用など、さまざまな種類のハサミがあちこちにあると思います。衛生面の問題はありますが、海外では1~2種類のハサミをこれらの用途すべてに使うのが一般的ですから、そのぶんモノが少なくなるわけです。

さらに、日本の家庭には飾り物も多いですね。私の友人の家には、こけしや人形、観光地の地名の入った置物、記念品の大きな置時計、ドライフラワーなどがあちこちに並べられていました。おそらく、いただいたものを捨てられずに飾っていたのでしょう。こうした景色は、欧米の家ではあまりみられません。

100円ショップの台頭も1つの原因

そしてもうひとつ。いわゆる「100円ショップ」の台頭も、モノを増やす原因になっているようです。

100円ショップへ行くと「えっ、こんなものも100円で買えるの?」と驚かされるモノがたくさん並んでいます。そのため、「必要ないかもしれないけど、あると便利かも」「たしか、あったはずだけど、念のため買っておこう」という軽い理由でモノを買いがちです。こうして、どんどん小物が増えていくというわけです。

ちなみに、日本で100円で売られている商品を海外へ持って行き紹介するというテレビ番組があります。つまり、海外には「100円ショップ」がないということで、海外の人の多くは「日本にはこんなに便利なものがあるの!」と驚きます。とてもありがたいお店なのですが、片づけを考えると、悩ましい存在ともいえます。

家の中にモノが多い理由をいくつか紹介しましたが、ここまででも解決策が見えてくると思います。たとえば、食器を仕分けする――たくさん食器を持っている人でも、お気に入りの食器やよく使う食器というのは限られてくるもの。そのシリーズ以外は手放すことを、親に提案してみましょう。

するとおそらく、「お客さんに食事をお出しするときに困る」と反対すると思います。そうしたら、「近所のレストランへ行けばいいのでは。そうすれば、片づけの手間も省けるでしょう」と言ってあげましょう。どんなに料理好きな人でも、片づけはたいへん。それをしなくてすむなら……と、思い直してくれるかもしれません。

また、使い方が限られる専門的な用品も減らせばいいですし、いただきもののお土産も片づけましょう。とくに、いただきもののお土産は、自分の思い出がつまっているわけではないので、比較的簡単に吹っ切れるはずです。

そしてもうひとつ、100円ショップで無駄な買い物をしないようお願いしておくこと。「ない」と思って買ってきたら見つかった、というなら、どちらかを処分するように言いましょう。処分を渋るときには「100円だから、またすぐに買えるでしょう」と言えば、納得してくれると思います。