美容情報にはウソがいっぱい!?
こうした形成外科医の観点から、いま世の中にあふれているさまざまな美容情報を眺めていると、「なんでそんなことをする必要があるんだろう?」「効果があるとは思えないな」と感じることが、本当にたくさんあるのです。
たとえば、とても単純な例でいうと、わたしの場合「肌をイメージしてください」といわれたら、断面図を思い浮かべます。ちょっと恐いかもしれませんが、日々皮膚を切ったり縫ったりしているので、肌の断層が浮かぶのです。でも、みなさんはおそらく、肌の表面をイメージするのではないでしょうか。
肌表面の下がどんな構造になっているのか、肌の仕組みがわかると、美容情報の見え方もガラッと変わってきます。
まずは肌の仕組みを正しく知ること。それが、美肌を手に入れるためのいちばんの近道です。
正しく知れば、巷の宣伝広告に乗せられることもなくなるでしょう。あなた自身が情報のウソホントを見極められるようになります。けっしてむずかしいことではありませんので、どうぞ安心してください。
“肌の奥まで浸透する”はあり得ない
ひとつ、みなさんに質問です。
化粧品のCMなどで見聞きする「肌の奥まで浸透する」の「奥」とは、いったいどこのことでしょうか?
答えは「角質層」です。「角質層まで浸透してプルプルのお肌に」などの宣伝文句もお馴染みなので、ご存知の方も多いと思います。
ただ、わたしがここで質問するポイントは、この角質層がどれくらい「奥」にあるかという点。じつは、わたしたちの肌のいちばん表面にあるのが、この角質層(=角層とも呼ばれます)です。
「あれ? どういうこと?」と思うかもしれません。
角質層まで浸透するといわれると、なんだかものすごく奥のほうまで染みわたってお肌によいような気がしてしまいますが、角質層というのは、肌表面の厚さ0.01から0.03ミリの部分を指します。
ここで肌の構成についてお話しておきましょう。
わたしたちの肌-皮膚は、真皮と表皮からなりたっています。そのうちの表皮が肌表面にあたる部分で、厚さは平均0.2ミリほどです。
この肌の表面(=表皮)はさらに分類され、外側から順に「角質層」「顆粒層」「有棘層」「基底層」の4層から構成されています。つまり、いちばん外側にあるのが角質層です。
そして、この角質層は、表皮の第4層目にあたる基底層が絶えず分裂をくりかえすことで押し上げられた“死んだ細胞”からつくられています。
少々ショッキングな表現かもしれませんが、肌の表面は“死んだ細胞”で覆われているのです。角質層の次にある顆粒層より下の部分には細胞核の点が見えますが、角質層にはありません。
細胞が生きていないので、血液中から栄養が補給されることもないのです。しかも、この角質層はふやけたり、傷ついたりすることで、構造が容易に崩れます。