形成外科医だから見えること

わたしは国立病院機構東京医療センターというところで形成外科医をしています。形成外科医というとピンと来ない方もいらっしゃると思いますが、簡単にいうと、頭のてっぺんから手足の先まで、目に見える部分はすべて形成外科であつかいます。

具体的には、顔や手足などからだの表面のケガや顔面骨折、やけど、アザ、腫瘍、先天異常、皮膚潰瘍、がんの切除後の再建、乳房の再建や美容医療などの疾患も治療対象です。

いちばんイメージしやすいのはいわゆる外傷ですが、広い意味で失った組織や機能を復元させる手術を得意としています。たとえば、がんを切除したためになくなってしまった組織を、からだのほかの部位から持ってきて再建する手術などです。乳房切除のあとの再建もそうですし、舌がんで大幅に失われてしまった舌を、太ももの組織を移植することで再建したりもします。

失敗すれば双方の部位を失ってしまう可能性もありますから、リスクと緊張感を伴う手術ばかりですが、その技術の代替案もつねに提案できる知識とトレーニングを積んでいるのが、形成外科医であるべきだと思っています。

身近なところでは、眼瞼下垂やいわゆる巻き爪。頭蓋顔面の変形や臍ヘルニアや多指症など、生まれ持った変形も治します。顔面神経マヒの患者さんには、神経や筋肉を移植して、顔の表情がなるべく自然に機能するようにする手術をおこなったりもします。

こうお話しすると、かなり大掛かりな手術ばかりだという印象かもしれませんが、実は“直接生命を救うための手術”の要素はあまり大きくありません。

専門は皮膚の再生

どちらかというと、自信を持って人前に出られるような機能や整容を取り戻し、社会復帰のためのお手伝いをしていくのが、わたしたち形成外科医の重要な役割なのです。その点では、レーザー治療を始め、知識や技術の面では、美容外科ともかなり共通しています。

形成外科では本来の機能や整容を失った患者さんが対象ですから、美容外科とは対象患者さんが異なりますが、最終的な仕上がりはよりキレイになることが求められますから、美容外科の勉強も必須です。

ちょっと硬い話になってしまいましたが、わたし自身は、組織を再生する再生医療研究に長年携わってきたこともあり、特に「皮膚の再生」が、わたしのスペシャリティだといえるのではないか、と思っています。