以前のようには仕事ができないモヤモヤ

産後の数カ月で、妻はすっかりママになりました。しっかり者だなと思うし、疲れているなとも思います。

初めて知ったのですが、妊娠を維持するために増え続けた女性ホルモンは、産後急速に減少し、およそ1週間で妊娠前の量に戻るのだそうです。急激なホルモンの変化は、ママの心身によい影響も悪い影響も与えます。産後のママはコントロールの難しいからだで、待ったなしの家事と子育てをしているのです。

この時期、よかったことは、妻が「できるだけ家にいてほしい」ときちんと伝えてくれたことです。そして、私がその要望に応えることができる環境にあったことです。

困ったことは、仕事ができなくなったことです。とくに、自宅の書斎で集中力を要する仕事はやりにくくなりました。これは、物書きには、かなりつらいことでした。まさに、育児のための休業、自主的な育休状態に陥ったのです。

「仕事ができないのは、能力がないからだろう」と言われたらそれまで。しかし、24時間赤ちゃんがそばにいる状況で、仕事も育児も家事もやり切るのは至難の業です。せめて仕事は休もう。

やりくりすれば、今以上に原稿を書く時間を捻出することはできると思います。ただ、その分、妻と娘の負担は確実に増えます。そう思うとなかなか踏み切ることはできないのです。

以前のようには仕事をする時間がとれない。それが育休中の悩みです。モヤモヤします。

私をイクメンと呼ばないで

イクメンという言葉が嫌いです。偽善的な臭いを感じます。

『現代用語の基礎知識2019』によれば、イクメンとは「育児に積極的に参加する父親」のことと定義されています。2010年には新語・流行語大賞を受賞するほど、この言葉は一般に広まっています。

たしかに私は育児に積極的に参加する父親です。しかし、イクメンと呼ばれることには強い抵抗があります。娘が生まれたことで、「よし! これで私もイクメンの仲間入りだ」などと、一瞬だって思ったことはありません。

なぜか。

もともと私が、出産・育児系の意識高い系ムーブメントが苦手だということがあります。

たしかに不妊治療の末に授かった待望の娘です。人生における貴重な時間だと認識しているので、子育てに真摯に向き合うことに異論はありません。

けれど、「別に少子化対策のために子どもを授かったわけではないしなあ」という気持ちが、どうしてもあるのです。

イクメンと持ち上げられたところで、仕事の絶対量は減らないし、忙しさが是正されるわけでもありません。子育て中の夫婦の忙しさの絶対量は解決されないし、イクメン手当てが出るわけでもないのです。