畑作業で自信を取り戻す人たち

うちの農園に通ってくる人たちは、最初は吉田さんのように人生に行き詰まり、生きる希望を失いかけている人が多い。でも、農作業を通じて自然と触れ合ったり、人と関わったりしているうちに、少しずつ本来の自分らしさや自信を取り戻していく。

小島希世子『農で輝く!ホームレスや引きこもりが人生を取り戻す奇跡の農園』(河出書房新社)

畑作業を通して考え方や性格などの内面が変わっていくという経験は、一般の体験農園参加者の中にもたくさん見受けられる。

たとえば、反抗期真っ盛りで手のつけられなかった中学生の男の子が、農園にくるようになってから落ち着きを見せるようになり、物に当たることがなくなった。トマトが大の苦手だった子どもが、畑で収穫したトマトのおいしさに感動し、それ以来、大のトマト好きになった。ストレスを抱えて気持ちが塞ぎがちだった人が、毎週日曜に畑に行くと決めて体を動かすようになった途端、気分も体調もよくなった。畑で土に触れたり、虫を見つけたりすることで、子どもの頃を思い出し、心が癒された。家族で畑にきて作業することで会話が増え、家族の関係がよくなった――。

そんな嬉しい変化があちこちで起きている。

撮影=柿崎真子

小島 希世子(おじま・きよこ)
野菜農家。えと菜園代表取締役・NPO農スクール代表理事。

1978年熊本県生まれ・熊本高校・慶應義塾大学卒。神奈川県藤沢市にて、体験農園・貸し農園「コトモファーム」を運営。また、熊本県から農家直送の通販サイト「えと菜園オンラインショップ」の運営などを行っている。自治体の就労支援の現場でのプログラム、認定農キャリアトレーナー育成プログラム、農作業を活用した新入社員研修プログラムなどの開発・提供を行う。