巨万の富を得て人間恐怖症に

残念ながら、このような幸せなお金持ちと対照的に、お金があることで、不幸になる人がいるのです。モナコで有名な銀行家のM氏は、巨万の富を得たために、人間恐怖症になってしまいました。リタイアしてからも、モナコの自宅を出る時は必ずボディーガードをつけ、パーティーなどで人が寄ってくると自分の財産目当てに近寄ってきたと思い込み、友人もいない生活だったそうです。幾度もの結婚、離婚を繰り返し、子供もたくさんいて、裏切りや騙されたことを振り返ると、自分が信じられるのはお金だけになってしまいます。しかし最後は、そのお金に苦しめられ、ノイローゼ状態で自殺をしてしまいました。何という、お金に翻弄された人生の結末でしょうか。

また、お金があってもケチで有名な人もいます。世界数カ所に大豪邸、クルーザー、高級車を所有するA氏。ビジネスの成功で優雅な生活を手に入れたものの、人を招いたり、招待することが大嫌いな彼。レストランでもわがままばかりで、いつも店員さん達がピリピリしながらサービスをしています。何につけても満足をすることができないのです。お金があり過ぎるためにわがままになってしまった結果、他人を愛することも愛されることもなくなってしまったのです。財産はつくりあげたとしても、人間として一番大切なものを失ってしまったのでしょう。

お金で人生が狂う人の特徴

お金が増えるほどに人生が豊かになる人と、お金があればあるほど人生を狂わせる人にわかれていきます。世界にはお金があり過ぎるばかりに、大切なものを失ってしまった人たちも少なからず実在するのです。お金に振り回される人生ではなく、お金を操れる人生を手に入れなかったら、幸せにはなれません。

一つの分かれ目は、お金に関する根本的な考え方の違いでしょう。「あなたにとってお金とは何でしょうか?」との質問をしてみると、「自由」「人に与えるもの」というポジティブな答えをする人と、「毎月支払うもの」「追われるもの」とネガティブな返答をする人に分かれます。ネガティブな返答はその人の人生観がそのもの。こういった人はいくらあっても幸せになることはないでしょう。

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畑中 由利江(はたなか・ゆりえ)
国際マナー研究家

モナコ公国に活動拠点をおく国際マナー研究家。2003年、日本人女性にプロトコールマナーを伝えるスクール「エコール ド プロトコール モナコ」を設立。日本と欧州の文化活動や社会貢献活動の功績に対して、王家騎士団“聖マウリッツオ・ラザロ騎士団”から2016年、Dame(ディム)の称号を得る。モナコ公国アルベール大公が名誉顧問総裁を務める国連提携慈善団体Amitié Sans Frontières Internationale(国境なき友好団)の日本支部代表理事。著書に『ドレスを1枚ぶらさげて』など。